ダービーからダービーへ
2017年5月28日、好天に恵まれた東京競馬場で行われた日本ダービーは、押し寄せた12万人余りの競馬ファンを熱狂の渦へと巻き込みました。今年も日本ダービーが終わり、新馬戦も始まり、早くも「ダービーからダービーへ」向けた戦いが始まりました。
しかし、ここでお話するのは違った意味合いでの「ダービーからダービーへ」となります。
レイデオロが今年の日本ダービー馬に輝いた数時間後、東京競馬場から遠く離れた九州、佐賀競馬場では九州ダービー栄城賞が行われました。
5月28日の九州ダービーを皮切りに、6月20日の石川ダービーまで全国8つの地方競馬場で、各地区の世代頂点のダービー馬の勲章を目指し、全国の3歳馬がしのぎを削る「ダービーシリーズ2017」が開催されています。
日本ダービーを楽しんだ方、いい思いをできた方、できなかった方、平日も競馬を楽しみたい、仕事帰りにちょっと楽しみたい、そんな方々へ、ダービーはまだ終わっていません、むしろ始まったばかりです。是非とも「日本ダービーから地方のダービーへ」参加してみてはいかがでしょうか。
「中央競馬は分かるけど、地方競馬はよく分からないから参加しない」という方もいると思いますが、そんな方にも興味を持って頂けるよう、地方競馬の各ダービーのなかでも最も賞金が高く注目度も高い、6月7日に大井競馬場で行われる「東京ダービー」についてご紹介したいと思います。
東京ダービーは大井競馬場2000mで行われる南関東3歳牡馬クラシックの二冠目のレースです。
大井の2000mというコースはチャンピオンディスタンスとも呼ばれ、「帝王賞」、「東京大賞典」、「ジャパンダートダービー」と、ダートグレードの大レースが行われるコースで、4コーナーのポケットからぐるっと1周するコース形態となっており、1コーナーまで長い直線が続くため基本的には枠順の有利不利はないと言われています。
まさに世代頂点を決めるにふさわしいコースで行われる東京ダービーですが、戦前の見方としては2強という評価になろうかと思います。
まずは第一冠羽田盃を制し、二冠目を狙うキャプテンキングです。
キャプテンキングはJRAで2勝を挙げ、オープンのヒヤシンスSで0秒5差の5着のあと南関東へと転入しました。ヒヤシンスSの勝ち馬はその後UAEダービーで僅差の2着し、6月10日(現地時間)にはアメリカ三冠の最終戦ベルモントSに出走を予定しているエピカリスで、その5着ということで、鳴り物入りで移籍してきました。
JRA時代は後方から追い込む競馬をしていたキャプテンキングですが、転入緒戦となった羽田盃では、ペースはそれほど速くなかったものの、馬なりでハナに行きそのまま押し切るという全く違う競馬で、スピードの違いをまざまざと見せつける走りを披露しました。
昨年の東京ダービーもJRA2勝から転入したバルダッサーレが転入緒戦で力の違いを見せつけての圧勝劇を見せており、昨年に続いてJRA2勝からの転入馬が東京ダービーを制するのかが注目されます。手綱を取るのは今年の大井リーディングトップを走る矢野貴之騎手です。
2年連続JRA2勝馬の東京ダービー制覇に待ったをかける南関勢の筆頭が羽田盃2着のヒガシウィルウィンです。
ヒガシウィルウィンはホッカイドウ競馬でデビューし、門別では連対を外すことなく重賞1勝、北海道2歳優駿ではエピカリスに2秒4の大差をつけられたものの2着を確保しました。ホッカイドウ競馬所属のまま遠征した全日本2歳優駿では、後のNHKマイルC2着馬リエノテソーロの4着という実績を残して南関東へ転入。浦和のニューイヤーC、そして南関東クラシックの最重要ステップとも言える大井の京浜盃と、重賞を連勝して羽田盃へと駒を進めましたが、キャプテンキングとの追い比べで半馬身まで迫ったものの、そこから差が詰まりませんでした。
一見すると2頭の間には着差以上の力差があるようにも見えましたが、安定感は抜群で、どんな展開でも力を発揮できるセンスを武器に、大一番での逆転を狙います。手綱を取るのは2014年から3年連続南関東リーディング、昨年まで2年連続地方全国リーディングで、今年も南関東リーディングをひた走る森泰斗騎手です。
羽田盃3着以下は2着ヒガシウィルウィンから5馬身離される結果となり、上位2頭の牙城を崩すのは容易ではないと思われます。この2頭に対抗できるかもしれない馬として、別路線組のブラウンレガートを挙げたいと思います。
ブラウンレガートはここまで7戦4勝2着2回3着1回と、馬券圏内を外したことはなく、今年緒戦のニューイヤーCではヒガシウィルウィンとタイム差なしの2着、続く大井のクラシックトライアルを勝ち、早々に東京ダービーの優先出走権を確保しました。京浜盃ではヒガシウィルウィンから0秒7差の3着と初めて連対を外す結果となりましたが、まだ底を見せていない魅力があります。地元大井の生え抜きということで、南関東ファンにとっても期待は大きいのではないでしょうか。第一冠の羽田盃は熱発のため回避となり、順調さという点では2強に見劣りますが、鞍上にも魅力はタップリです。
手綱を取るのは先日地方競馬通算7000勝という偉業を成し遂げたばかりの「大井の帝王」的場文男騎手です。一般メディアなどでも取り上げられており、地方競馬に詳しくない方でも知っている方は多いのではないでしょうか。
数々の大レースを制して輝かしい実績を残している的場騎手ですが、東京ダービーは35回挑戦して2着が9回となぜか縁がありません。このことは毎年話題となります。そんな的場騎手の悲願である東京ダービー制覇。的場騎手にとって36回目の東京ダービーはブラウンレガートをパートナーに挑みます! 的場騎手ではまだ連対を外していないブラウンレガート、大一番で大仕事をやってのけるでしょうか。
ここまで紹介した馬以外に優先出走権を持つ馬の1頭にポッドルイージがいます。
ポッドルイージは昨年末のデビュー戦は6着に敗れたものの、年明けの2戦目から4連勝で前走の東京ダービートライアルを制し、本番へと駒を進めます。
前走の東京ダービートライアルでは楽に先手を取り、直線に向いてもしっかり脚を使って逃げ切りました。前、前で立ち回れるセンスの良さは魅力です。とはいえ、東京ダービートライアルは王道の重賞路線に比べるとどうしてもメンバー的に一枚落ちるため、例年このレースの勝ち馬は東京ダービーでは苦戦を強いられています。4連勝の勢いと若手の注目株、瀧川寿希也騎手の思い切った騎乗でどこまで実績馬相手に立ち向かえるでしょうか。
その他に優先出走権を持つ馬に羽田盃3~5着のキャンドルグラス、ホワイトソニック、クラキングス、また東京湾C1、2着のソッサスブレイ、クラトリガーがいます。昨年のハイセイコー記念の勝ち馬であるミサイルマンもここ2戦期待されたほどの走りができていませんが、本番での巻き返しを狙っていることでしょう。ホワイトソニックに騎乗するのは坂井英光騎手でJRAの坂井瑠星騎手の父でもあります。また、キャンドルグラスに騎乗する赤岡修次騎手、クラキングスに騎乗する吉原寛人騎手はJRAのワールドスーパージョッキーズシリーズ(現在のWASJ)でも活躍した経験があり、JRAファンでも知っている方はいるのではないかと思います。2人の地元は高知、金沢競馬ではありますが、地方騎手が地元以外の地区の重賞で騎乗できるようになって以降、各地の重賞に騎乗する機会が増え、ここ最近では全国の重賞で引っ張りだこの実力者です。この2人が騎乗するということは陣営の期待の表れであるとも言えるでしょう。
ここまで牡馬勢をご紹介してきましたが、羽田盃組は2強に差をつけられていることから、まだ対戦していない馬で上位に来る可能性のある馬となると、牝馬路線から東京ダービーへと参戦してくる実績馬が挙がります。
というのも、牝馬クラシック路線の次なる舞台はダートグレードの関東オークスとなり、JRAの強豪相手ではどうしても苦戦を強いられることが予想され、そこを目指すよりは牡馬相手でも地方馬同士の東京ダービーへ向かう方が戦いやすいとも言えるのです。更に、関東オークスよりも東京ダービーの方が賞金が高額でもあります。
牝馬勢の筆頭が牝馬クラシック第二戦、東京プリンセス賞を制したアンジュジョリーです。ホッカイドウ競馬でデビューしたあと南関東に転入し、昨年末の東京2歳優駿牝馬で後方から末脚を伸ばして3着。小回りの浦和では結果を残せませんでしたが、前走の東京プリンセス賞では牝馬らしい切れ味を発揮しての差し切りと、末脚は確かです。地方馬同士とはいえ、牡馬の強豪相手で勝ち切るのは容易ではなく、牝馬の東京ダービー馬となると、JRA勢相手のダートグレードでも互角に渡り合った2011年のクラーベセクレタまで遡ることとなりますが、大井では3着を外しておらず、前がもつれる展開となれば嵌まる場面があるかもしれません。
牝馬でもう1頭参戦するシェアハッピーも前走の東京プリンセス賞では結果が出ませんでしたが、前々走の桜花賞(浦和)では3着と、今年の牝馬勢のなかでは上位の実績馬です。
競馬ブック M.M 競馬があるところにはどこへでも足を運び、JRA、地方各競馬場を踏破、昨年は香港にも遠征。JRAは勿論だが、地方競馬が大好物。ただ、馬券はド下手という致命的弱点を持つ。 |