2019年10月20日(日) 4回京都7日
今年は皐月賞馬サートゥルナーリアが天皇賞秋へ。ダービー馬ロジャーバローズは右前屈腱炎を発症し、8月に登録を抹消。また前哨戦である神戸新聞杯、セントライト記念の勝ち馬も不在とあって、大方の予想は混戦。その中で皐月賞②着、ダービー③着のヴェロックスが頭ひとつ抜けた1番人気に支持されたのは自然のことかもしれない。
馬場はメインレースまでに良まで回復していたが、ひとつ前の3勝クラス芝1200mで1.09.1。この日は全体を通して約1秒ほど時計を要す馬場。前半62.4─中盤62.9─後半60.7と道中のラップに極端な緩みはなく、底力を問われた形。その割に上がり3ハロン上位の4頭が①②④⑤着と終いの脚も要求されたし、上位陣の実力は素直に評価していいと思う。
ワールドプレミア勝ちましたね。全兄ワールドエースは2012年の皐月賞で2番人気②着、日本ダービーを1番人気④着で終えると、屈腱炎による長い休養を余儀なくされ、クラシックは無冠。その兄の無念を晴らす勝利だった。また父ディープインパクトは今年の7月30日(火)早朝に急逝し、手向けの父仔制覇ともなった。鞍上は武豊騎手。50歳7カ月6日での達成は菊花賞における最年長優勝記録となる。武豊騎手は菊花賞の最年少優勝記録(19歳7カ月23日)も保持。現状で昭和、平成、令和と3つの元号でそれぞれJRA・G1を勝っている唯一の存在。
3000mで緩みのない流れなら内でジッとしていた方がいいのは確か。ワールドプレミアも道中は中団の内でジッと力を溜めて、2周目の坂の下りでスルスルと内を上がっていくと、4角ではレースを引っ張った5枠2頭の直後という絶好の位置。直線も前を行くヴァンケドミンゴがバテてスペースができたし、G1を勝つ時はこんなものなのだろう。テンに少し出して後ろ過ぎないポジション取りも吉。テンションの高さは相変わらずだったが、プラス12㎏の馬体に太め感はなく、迫力十分だった。
②着にはサトノルークスが入ってディープインパクト産駒のワンツー。道中は中団の外。勝負どころの坂の下りで勢いをつけて直線へ。馬場の外めから脚を伸ばして1番人気ヴェロックスを交わしたまでは良かったが、「ヴェロックスを目標にして交わしてくれたけど、内にもう1頭いたね」とは福永騎手。着差を考えると回ってきた内外の差は大きかったか。
ヴェロックスは2019年三冠レース②③③着と、すべてにおいて上位争いを演じた。あと一歩届かなかったが、素晴らしいパフォーマンス。序盤は折り合いがつくまで少し時間を要したし、勝負どころでタガノディアマンテとホウオウサーベルが早めに来たので、こちらも早めに動く形。最後はその分の差とも言えなくもないが、距離もこの馬には長かったか。負けはしたが、強い競馬をしていると思う。
序盤は最後方からレースを進めたディバインフォース。1周目スタンド前で少しポジションを上げる。外々を回る形にはなったが、十分に脚は溜まっており、4角で大外へ出すと直線は一完歩毎に伸びてきた。地力を問われるペースで終いに賭ける競馬が嵌まったとはいえ、長距離適性をきっちりと示した。テンに無理をせず、道中で追い出しやすい位置を確保して、4角で惰性をつけて直線へ。鞍上がやりたい競馬はできたのかなと。
メロディーレーンは前走で最少体重優勝記録を更新。この日は少しテンションが高かったが、2㎏増の340㎏での出走。これまでに長距離適性は示していたが、今回は斤量55㎏が課題だった。それを3000mの牡馬混合G1という舞台で克服して⑤着。これはグレード制導入後、1995年1番人気に支持されたダンスパートナーと同じ牝馬の菊花賞最高着順。追加登録料200万円を支払って出走させてきた陣営の慧眼には恐れ入る。道中は後方だが、あまり外過ぎないロスを最小限に抑えた立ち回りで、直線は外から伸びてきた。上がり勝負ではなく、スタミナ勝負なった点は良かったはず。
ルメール騎手に乗り替わったニシノデイジーは2番人気に支持されたが、結果は⑨着。道中はリズム重視。枠なりでロスなく回ってきて、直線もジリジリとは伸びているが、上位を脅かすまでには至らず。デキは良さそうに見えたが、伸び切れなかったのは距離なのか馬場だったのか。ヒシゲッコウは4戦3勝の成績とスミヨン人気も手伝って、初重賞にも拘らず4番人気。レースは上手に運べたとは思うが、現状の力ではここまで。パドックでもこのメンバーに入ると少し見劣ったが、キャリアを考えると長い目で見たい。
text by kobayashi
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