11月6日(日曜)に東京競馬場で行われた第60回GⅡアルゼンチン共和国杯(芝2500m・3歳以上・ハンデ・晴れ・良馬場)はブレークアップが力強く抜け出して優勝。騎乗した田辺裕信騎手、管理する美浦・黒岩陽一調教師ともアルゼンチン共和国杯は初勝利。ブレークアップは北海道浦河町谷川牧場の生産馬。馬主は阿部東亜子さん。
それでは、レースを振り返っていきましょう。
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【展開・ペース】 予想通り、キングオブドラゴンが最内枠から主導権を握り、アフリカンゴールド、ブレークアップが追いかける形。キングオブドラゴンは終始、大きなリードを取っていましたが、1000m通過は61秒4。離れた2番手以降のペースはかなりのスローだったと考えて良く、末脚温存型には厳しい展開となりました。
【レース分析】 2番手のアフリカンゴールド以下はかなり遅いペース。その点を考慮すると3番手を進んだブレークアップ(6番人気)は絶好の位置取り。3コーナーを過ぎてから徐々に加速し、前との差を詰めにかかります。直線入り口でキングオブドラゴンがラチと接触するアクシデントがあったものの、機敏に反応し、ロスを最小限にとどめることができました。堂々と抜け出すと後続の追い上げもシャットアウト。これで東京芝では⑨②①①着。控えるレース運びを完全にマスター。ひと皮剥けました。
「成長は感じていましたが相手も強かったですし、まさか勝てるとは思っていませんでした。正直びっくりしています。行く馬がいなければハナも考えましたがあの位置からになりました。道中はいかにロスなく運べるかを考えて運びました。直線でアクシデントがあり僕もヒヤッとしたのですが、幸いにも影響なく回避してリズム良く追い出せましたし、しっかりと反応もしてくれました。以前跨った時は終いに踏ん張りが利かない印象があり、逃げる競馬を選択したのですが、前走を見た感じ、踏ん張りが利くようになったのかな、と思いましたし、実際思った通りのレースをしてくれました。遅咲きかもしれませんが、徐々に力をつけて重賞も勝てました。これから更に大きな舞台でも頑張ってほしいです」と田辺裕信騎手はコメント。戦法に幅が出ており、充実一途。先行力と器用さを備え、中山コースでも結果を残していますから、次走で舞台や条件が替わっても期待していいのではないでしょうか。
ハーツイストワール(5番人気)も勝ち馬と同様に東京コースで実績を重ねてきました。ただ、日曜日の芝のレースでは強烈な内有利のトラックバイアスが見て取れました。8枠から外を回らされると厳しいだろうなと戦前はそんなことを感じていました。その点は名手・武豊騎手も織り込み済み。スタート後、自然体で好位の直後に陣取ると、そこから内に潜り込み、ロスを抑えて1~2コーナーをパス。まったく急かしていませんからハーツイストワール自身は力むことなく、リズム良く流れに乗れていました。これが好走要因。直線に向く際、アクシデントに巻き込まれ、減速したのは悔やまれますが、立て直して内へ進路を取ると上々の伸び。6歳ですが、前走でリステッドを勝ったように更に力をつけていますね。ヒートオンビート(3番人気)は好位の直後で折り合って追走。直線ではゴチャつくのを上手に回避し、ジワジワと脚を使いましたが、③着まで。能力は誰もが認めるところ。距離の守備範囲も広く、次走以降も重賞制覇のチャンスがあります。
1番人気テーオーロイヤルは⑥着。直線入り口でアクシデントに巻き込まれ、ブレークアップとカントルの後ろで大きくブレーキを踏む形に。瞬時に加速できず、しかも57.5キロのトップハンデを背負っていたこともあって伸び負ける形に。それでも、勝ち馬からはコンマ2秒差。次走はきっちりと巻き返してくれるでしょう。キラーアビリティ(2番人気)は発馬でヨレてしまい、後方から。行きたがるのをなだめつつ、折り合って運びましたが、今日のペースでは差し届くのは難しかったですね。それでも、脚は見せたようにポテンシャルは高く、精神面が成長すれば完全復活の日は近そうです。
text by 藤原 有貴
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