第60回札幌記念回顧

　8月18日（日曜）に札幌競馬場で行われたサマー2000シリーズ第4戦。第60回ＧⅡ札幌記念（芝2000ｍ・3歳以上・定量・晴れ・良馬場）は5番人気のノースブリッジが優勝。管理する美浦・奥村武調教師、騎乗した岩田康誠騎手とも札幌記念は初勝利。ノースブリッジは北海道新冠町村田牧場の生産馬。馬主は井山登さん。

それでは、レースを振り返っていきましょう。

▲ボッケリーニは競走除外

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【展開・ペース】　積極的に運ぶと思われた最内枠のドゥラエレーデがスタートでアオり、トップナイフも行き脚がつかなかったのでアウスヴァールが軽く気合をつける程度ですんなり先制。外からノースブリッジが2番手につけると後続は折り合いに専念し、1000m通過60秒5は別定GⅡとしては緩やかな流れ。しかも、先頭は少し後ろを離していましたから、馬群が縦長でも2番手以降は超がつくスローペース。外を追い上げる形になった差し馬には厳しい展開となりました。

【レース分析】　勝ったノースブリッジ（5番人気）は海外帰りの休み明けでも調教段階から仕上がりが良く見えて、当日も申し分ない体つき。外から2番手につけると前から少し離れた位置でも行きたがる様子はなく、3コーナーあたりで動き始めた時も鞍上の手は動かないまま。4コーナー手前で本格的に追い出されると手応え通り一気に伸びて前を捉え、そのまま危なげなく後続も振り切りました。

　「今までやってきた海外遠征や色々なことが、この競馬につながりました。いつもは先行して力みがあったり、体力が削られたりしていましたが、今日はカタールや香港での経験が生きて、馬が充実していましたし、初めて完璧に近いレースができました。最初のゴール板を過ぎるときには自分のペースで行けて、冷静に運べましたし、３～４角で仕掛けてからも、この馬の素晴らしい瞬発力を見せてくれました。この秋はこういう感じで、昨年のノースブリッジとは違うところを見せられればと思います」とレース後に岩田康誠騎手はコメント。当日版の各馬の評価ポイントのところにも記しておきましたが、近況、特に香港でのレースぶりから、馬は6歳でも今が充実期といった様子。更に鞍上も先日の函館記念を同厩舎の馬で制した際と立ち回りが重なるような完璧なエスコートで、見事としか言いようのない勝ちっぷり。国内で更に上を目指すには高速馬場への対応など、まだハードルはありますが、再び海外遠征などの選択肢もある馬ですから、今後も活躍が期待できることは間違いありません。

▲ノースブリッジの4代血統表

　②着ジオグリフ（3番人気）もスタートを決めて、好位のインにつける理想的な立ち回り。勝ち馬とは上がりの数字が同タイムだったように、展開のアヤもあって敗れましたが、やはり洋芝は合っていますね。一時あったレースぶりが不安定な面も払拭したと見ていいでしょう。③着ステラヴェローチェ（4番人気）はスタートしてすぐ、スタンド前のうちに内に進路を取った鞍上の巧みな誘導が光りました。勝負どころからも内々を通って、しっかりと脚を伸ばしてきましたが、今回の展開や今の時計が速い札幌の芝コースの良馬場では、ここまでが精一杯。もし、ひと雨降っていれば、と感じさせる結果になりました。

　そして④着が本紙で◎にして、断然の支持も集めていたプログノーシス。直接の敗因はスタートの出遅れですが、以前は直線一気の競馬をしていた馬ですから、後方からのレースになっても問題はなかったはず。ポイントは追撃態勢に入った際の反応が今ひとつだった点で、このあたりは6歳になっての休み明けが影響したのでしょうか。それでも、展開を考えると馬群の外を回って、上がり最速で0秒5差④着は負けて強しと言えます。ただ、ＧⅠ獲りに向けてはゲート内の駐立など、課題を残した一戦にもなりました。⑤着シャフリヤール（2人気）も展開が向きませんでしたが、この馬は元来、叩けばパフォーマンスが上がるタイプ。距離もベストは2400ｍでしょうから、次走が昨年と同様の米国遠征なら、見直しは当然でしょう。また、○に期待したトップナイフ（7番人気）は⑥着。解消したと思われた発馬の不安がぶり返した形ですが、以前ほど致命的な出遅れではなく、内から脚も伸ばしていました。あくまでも個人的な印象になりますが、鞍上が誰ということではなく、テン乗りだと力を出し切るのが難しい気性なのでしょう。これは事前に予測できたことなので、自身の反省点だと考えています。

text by 五十嵐友二