9月7日（土曜）に中山競馬場で行われた第9回ＧⅡ紫苑S（芝2000ｍ・3歳牝馬・馬齢重量・晴れ・良馬場）は5番人気に支持されたクリスマスパレードが優勝。管理する美浦・加藤士津八調教師、騎乗した石川裕紀人騎手はともに紫苑Sは初勝利となった。この結果、クリスマスパレード、ミアネーロ、ボンドガールがGⅠ秋華賞の優先出走権を獲得した。クリスマスパレードは北海道安平町ノーザンファームの生産馬。馬主は(株)G1レーシング。
それでは、レースを振り返っていきましょう。
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【展開・ペース】 先手候補と思われたエラトーがアオり気味のスタートで行き脚がつかず、内のバランスダンサーも行く気はなかったようで、出脚の速かったイゾラフリーチェがそのままハナへ。前半3ハロンが34秒７は開幕週の超高速馬場を考慮すれば緩めの入り。その後も12秒前後のラップが続く落ち着いた流れとなり、レース上がりは34秒0ですから、前めの位置で流れに乗れる機動力か、速い上がりに対応できる瞬発力が求められる展開になりました。
【レース分析】 勝ったクリスマスパレード（5番人気）は関東オークス以来の実戦でも体重は2キロ減ときっちり仕上がった体つき。スタートを五分に出ると二の脚が速く、労せず2番手につけて、折り合いも実にスムーズでした。残り2ハロンの標識あたりから前に並びかけて、直線を向くと早々に先頭に立ち、食い下がっていた④着馬を坂上で振り切り、最後は鋭く迫ってきた後続の追撃も凌いで、そのまま押し切りました。
「今日は馬場状態も良かったですし、速い時計が出そうだなとは思っていましたが、それでも（このタイムには）びっくりですね。前走はダートを使いましたが、返し馬の感じから、特に影響は感じませんでした。ただ、やはり芝向きですね。まだ気性が幼いところはありますが、その点は厩舎サイドがしっかり調整してくれているので、これからも明るい未来が待っていると思います」とレース後に石川裕紀人騎手はコメント。これで中山の芝コースは3戦3勝ですから、コース適性の高さは疑う余地がありませんが、本番の秋華賞もコースを1周する京都の内回りが舞台ですから、前で運べる脚質にはぴったり。例年以上に速い時計が出る芝の状態（個人的な見立てだと2000ｍなら3秒くらいは速い）を考えるとレコード勝ちにそれほどの価値は感じませんが、水準以上のレベルのタイムで駆けていることは確か。経験のない関西遠征をクリアできれば、本番でも上位争いに食い込んできそうです。
▲クリスマスパレードの4代血統表
②着ミアネーロ（3番人気）はスタート自体は今ひとつでも気合をつけることなく馬群に追いつき、その後は中団の後ろめの内で脚をためる形。勝負どころから追い上げた時も馬群をスムーズに捌けて、持ち前の決め手を発揮して鋭く伸びてきました。一瞬の脚を生かせる馬場、展開は味方しましたが、勝ち馬とは位置取りや戦法の違いが出た格好。こちらも本番の京都内回りは合いそうです。③着ボンドガール（1番人気）は10キロ減の体重でもイレ込みや馬体が細い印象はなく、今回も差しに徹して折り合いはスムーズ。②着馬の直後から一旦は内に進路を求めた分、鋭く伸び始めるタイミング遅くなった印象ですが、上手に立ち回った④着馬をゴール寸前で捉えたのは能力の高さ。ただ、今回の戦法なら折り合い面や2000ｍに不安がなくても、同じ形では更に相手が揃うと、勝ちに行くのは容易ではない印象も。積極的な立ち回りでも掛かることなく運べるかは、まだ、未知数だとも感じました。
④着レイククレセント（8番人気）は勝ち馬をマークする形で、レース運びとしては完璧。最後に脚勢が鈍って出走権を逃したのは現状の力の差と言うしかありませんが、まだ１勝馬ですから、小柄な馬体を維持できれば、自己条件なら主役候補になるでしょう。本紙◎で2番人気だったエラトーは⑧着でしたが、スタートが決まらず、本来の前で運ぶ競馬ができなかったことがすべて。それでも0秒6差と大きくは崩れていませんし、坂越えの2000ｍに問題がないことは確認できました。勿論、上位馬との勝負づけも持ち越しとなります。一方で残念だったのは個人的に◎に期待していて、10番人気でシンガリ負けとなったサロニコス。速い上がりで前を捉えた前走の勝ち方は開幕週の芝にマッチすると考えたのですが、スタートでアオって最後方になり、直線でも脚を使えず終い。最後は走りがバラバラになっていたので、今回が重賞初挑戦のキャリアの浅さが出て、更には初めての2000ｍも長かった可能性もありますが、力を出していないことは間違いないので、次走以降に改めて注目したいと思います。
text by 五十嵐 友二
※結果・成績・オッズ等のデータは、必ず主催者発行のものと照合し確認してください。