
5月17日(土曜)に新潟競馬場で行われた第47回GⅢ新潟大賞典(芝2000m・4歳以上・ハンデ・曇り・稍重馬場)は8番人気のシリウスコルトが優勝。管理する美浦・田中勝春調教師は嬉しいJRA重賞初勝利。騎乗した古川吉洋騎手は2012年にヒットザターゲットで勝利しており、当レースは2勝目となった。シリウスコルトは北海道新ひだか町千代田牧場の生産馬。馬主は飯田正剛さん。
それでは、レースを振り返っていきましょう。

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【展開・ペース】 戦前から逃げ候補は特定しにくい組み合わせ。スタート直後は前にいたフライライクバード、グランドカリナンもハナは切りたくなかったようで、序盤の3ハロンを過ぎるあたりからシリウスコルトが自然体で馬群の先頭に。1200m通過あたりまでピッチは上がらず、典型的なスローペース。これで新潟外回りなら普通は瞬発力比べになるところですが、稍重の馬場状態だったため切れる脚を使うタイプは持ち味を発揮できず、緩い流れを味方にできる機動力のある馬、差し馬なら時計を要す馬場を苦にしないパワー型が台頭する結果となりました。
【レース分析】 勝ったシリウスコルト(8番人気)は転厩緒戦から中1、4週と使い込んでいても体重6キロ減の馬体が細くなった印象はなく、引き続き好調といった雰囲気。好スタートを決めて序盤は若干、行きたがる感じがありましたが、無理に抑えずハナに立ってからは折り合いもスムーズ。終始、1馬身くらい馬群から前に出ている形で直線を向き、鞍上がスパート態勢に入ったのは内回りとの合流点あたり。ここから後続との差を広げると最後まで脚勢は衰えず、外から伸びてきた②③着馬の追撃も振り切りました。
「スタートのいい馬なのでハナに行くことも頭の中に入っていましたし、逃げることも作戦のなかにあって、想定内でした。田中勝春調教師がうまく調整してくれていて、自分としてはいいタイミングで乗せていただいているだけです。先輩の厩舎の馬で重賞を勝つことができて嬉しいです」とレース後に古川吉洋騎手はコメント。中1週で前走を勝ったあとでも状態面に不安がないことは調教VTRでも確認していましたが、小回りなら2000mは守備範囲内でも直線の長いコース、しかもタフな馬場だとどうか、と考えて本紙で無印にしてしまったのは痛恨。ファンの方もそのあたりを考慮して8番人気という評価だったと思われますが、正攻法から押し切った内容は展開利を考慮しても立派なもの。転厩を契機にひと皮剥けたと判断して良さそうです。謙遜していたジョッキーとの相性も抜群ですね。まだ、高速馬場での切れ味勝負に課題はありそうですが、サマー2000シリーズあたりに進路を向けるようなら、有力候補となることは確かでしょう。
▲シリウスコルトの4代血統表
②着サブマリーナ(3番人気)はスタートで後手を踏みましたが、自分の競馬に撤して後方で末脚を温存。直線で徐々に外へ持ち出し、最後は馬場のいい外ラチの近くから上がり最速で伸びて連対圏へ突入しました。もともと昨秋、神戸新聞杯を出走取消でなければ、高い評価をされていたと思われる素材ですし、昇級緒戦で重賞②着も頷ける結果。ただ、時計を要す馬場は決して得意とはいえないタイプと見ていましたから、良馬場なら更に鋭さを増す可能性も多いにありそうです。③着が▲の評価にしていたハピ(10人気)で、たらればではありませんが、同じ予想が外れるとしても、こちらを◎にしておけば良かった、というのがレース直後の正直な第一印象。芝には適性があり、時計を要す馬場も味方しましたが、57キロのハンデで②着馬と遜色のない脚を使っており、勿論、フロック視はできません。今回は立ち回り次第では良馬場でも侮れないという感想も持ちましたし、距離を延ばすという選択肢もありそうです。
④着グランドカリナン(7番人気)は2番手追走から流れ込む形。今は左回りの1800から2000mがベストという見立ては正しかったようですし、着実に力もつけていますね。一方、本命視していたディマイザキッド(2番人気)は⑧着。後方待機で手応えも良く見えましたが、追っての伸びは案外で、結果的に今回は馬場の悪い内を通らされる枠が影響した感じも。ただ、放牧明けで連勝時のデキにはひと息だったフシもあり、能力的には間違いなく重賞でも足りるはずですから、次走で改めて真価を問いたいところです。1番人気で⑩着に終わったレガーロデルシエロは戦前から本質的に末脚が切れるタイプという印象があったので、重賞だと馬場適性の差が出たというところでしょうか。それでも、この馬で勝ち馬と0秒9差ですから、壁に当たったと見るのは早計だと考えています。
text by 五十嵐 友二
※結果・成績・オッズ等のデータは、必ず主催者発行のものと照合し確認してください。