ジャパンカップ 回顧

英断がもたらした世界戦制覇

　2017年11月26日(土)5回東京8日目11R第37回ジャパンカップ(ＧⅠ)は、単勝5番人気に支持されたシュヴァルグラン(父ハーツクライ×母ハルーワスウィート)が優勝。アルゼンチン共和国から中2週だった昨年と違い、今年は京都大賞典後、余裕のあるローテーション。ジャパンカップに目標を定め、キッチリと仕上げた陣営の判断が呼び込んだ勝利だったように思います。姉ヴィルシーナ、妹ヴィブロスに続くＧⅠ制覇。3頭とも馬主は元大リーガーの佐々木主浩さんです。管理するのは友道康夫調教師。騎乗したのは現在22連勝中のウィンクスの主戦として知られるＨ・ボウマン騎手。これが15年にハートレーで制したホープフルＳ以来となるＪＲＡ重賞2勝目。初騎乗でしたが、上手にリードし、力を引き出しました。

それでは京増ＴＭにレースを振り返ってもらいましょう。

 

【パドック】

　レイデオロはプラス８キロでも、研ぎ澄まされた馬体。若干、うるさいのは気持ちが入っている証拠。心身ともに充実して万全の仕上がり。1番人気キタサンブラックはいつも通り、完歩が大きく、堂々とした周回。懸念された天皇賞・秋の疲れは特に感じられませんでした。シュヴァルグランはハーツクライ産駒らしく、腹回りがドッシリしていて、柔らかみのある脚捌きで上々の気配。

勝ち時計　2分23秒7(晴れ・良)

前・中・後半4Ｆ　48秒4 → 48秒2 → 46秒9

13.0 – 11.2 – 12.1 – 12.1 – 11.8 – 12.1 – 12.3 – 12.2 – 11.8 – 11.3 – 11.8 – 12.0

16年　ジャパンカップ(優勝・キタサンブラック)

13.3 – 11.3 – 12.6 – 12.3 – 12.2 – 12.5 – 12.7 – 12.3 – 11.9 – 11.2 – 11.4 – 12.1

 

【展開・ペース】

　キタサンブラックが主導権を握り、スタート後の1Ｆ目を抜かせば、もっとも遅いラップが12秒３。前半1000ｍ通過は60秒３(16年は61秒7)。残り4Ｆ地点から加速し、昨年よりも地力を問われる流れになりました。

【レース分析】

　勝ったシュヴァルグランは、最内1番枠からスタート。1コーナーを迎えるまでに内の5番手という絶好のポジションを取れたことが勝因のひとつ。直線に向くと残り2Ｆ付近で、バテた先行馬を捌いてスムーズに追い上げ態勢にも入れました。最近はスタートが安定してきましたし、位置取り、折り合い、仕掛けのタイミングなど初騎乗ながら満点の騎乗をしたボウマン騎手の手腕が光りました。

「戦前からキタサンブラックをマークしようと考えていました。道中、スムーズに運べたことで直線はキタサンブラックに一歩一歩迫ってくれたし、これなら交わせるという思いに変わりました」とボウマン騎手。管理する友道調教師は「このあとは予定通り有馬記念に向かいます」とコメント。器用に運べるようになった今なら中山内回りコースに舞台が替わっても、好走は可能でしょう。

　◎を打ったレイデオロはスタート直後に隣のギニョールに前に入られ、1コーナーでもゴチャつく場面。それでも、上手に折り合って、4コーナーでは好位の後ろまで進出。うまくリカバリーできるあたりは、さすがルメール騎手ですね。ただ、欲を言えばやはり欲しかったのはシュヴァルグランのポジション。結果的に位置取りとコース取りの差が出た分の2着だったように思います。

ルメール騎手は「スタートの1歩目は遅かったんですが、いつもこのような感じ。道中はスムーズで外から伸びました。(2着でしたが)3歳馬にとってはいい経験になりました。ポテンシャルも凄く高い、次が楽しみです」とコメント。振り返るとディープインパクトも古馬と初対戦だった有馬記念は2着。これだけ走れたのですから、十分に胸を張れるレース内容でしょう。

　キタサンブラックは不良馬場で行われた天皇賞・秋を激走した後でしたが、最後まで渋太く食い下がって0秒2差の３着ですから立派の一言。ただ、2戦続けて目一杯のレースをしただけに有馬記念での取捨に迷うところ。

　▲としたソウルスターリングは地力勝負になったこともあり、直線半ばで力尽きてしまいましたが、天皇賞・秋に続いて国内トップクラスの強豪に揉まれたことは今後の財産となるはず。是非とも、来年につなげて欲しいですね。またオークスの勝ち馬ではありますが、今日のレース内容を見ると2400ｍは若干長いのかなとも感じました。

　text by　京増真臣／構成 藤原

 

 ※結果・成績・オッズ等のデータは、必ず主催者発行のものと照合し確認してください。