10月19日に東京競馬場で行われた第22回GⅢ富士S(芝1600m・3歳以上・別定)は2番人気に支持された春のマイル女王ノームコアが力強く差し切って優勝。この勝利により、GⅠマイルCSの優先出走権を獲得した。先週、GⅠ秋華賞を制した妹クロノジェネシスに続き、姉も勝ち星。秋のGⅠ戦線に向けて最高のスタートを切った。鞍上のC.ルメール騎手は富士Sを含め、この日の東京競馬で6勝をマークと絶好調。管理するのは美浦・萩原清調教師。ノームコアは北海道安平町・ノーザンファームの生産馬。馬主は池谷誠一さん。

 

それではレースを振り返っていきましょう。

 

 

【展開・ペース】 トミケンキルカスがハナを主張。ショウナンライズイレイションらが続きましたが、それほどペースは上がらず。前半3ハロン通過35秒0は稍重という馬場コンディションを考慮しても決しては速くはない数字

 

【レース分析】 戦前は、ある程度タフな流れになるという見立て。ところが、蓋を開けてみれば、ペースはスローに近い。こうなるとノームコアは牝馬ながら56キロ(牡馬換算58キロ)という重量が脚を鈍らせるかという考えが頭をよぎった。しかし、直線で外に持ち出すと鋭く伸びて差し切り勝ち。斤量、展開を考慮すると完勝と言える内容だった。しかも、初経験となる稍重の芝も克服してしまった

 

ノームコアの4代血統表

 

 「今日は外枠でしたし、休み明けでもあったので、あまり前のポジションには行きたくありませんでした。後方から前にいた人気馬を見て運び、道中では勝つ自信がありました。馬が大人になって強くなり、凄く良くなっていますね。終いはいい脚を使ってくれましたし、この次、更にパワーアップすれば、GⅠでもチャンスは大きいでしょう」C.ルメール騎手。GⅠヴィクトリアマイルは前半3ハロンが33秒台。逃げたアエロリットらの脚が鈍る中、展開利があった。それが今回は自らの脚力を生かし切っての差し切り勝ち。骨折明けではあったが、直線の伸びは春より凄みを増しており、今度はGⅠで牡馬を粉砕するシーンが見られるかもしれない。

 ②着はレイエンダ。GⅢ新潟記念では着けなかったチークピーシズを着用。馬込みの中で運んだ前走と違い、後方で揉まれないように追走。これが正解。のびのびと走り、直線で外に持ち出すとノームコアと一緒に鋭く伸びてきた。マイルに対応できた点も収穫。次走に関しては未定だが、極端に内目の枠を引くことさえなければ、たとえマイル王決定戦でも上位進出があって驚けない。

 

 

 私が本命としたレッドオルガは③着。母は東京マイル巧者を多数送り出すエリモピクシー。前走のGⅠヴィクトリアマイルはあまり得意と言えぬタフな流れ。加えて直線では進路が狭くなって不完全燃焼に終わった。迎えた今回は2番枠から内ラチ沿いをロスなく追走。前半3ハロン通過タイムが35秒0とモニターに表示された瞬間に私は「上がり勝負になる」と確信。内目を無駄なく走った分のアドバンテージも大きく、勝利を予感したのだが。直線で前が壁になるシーンはあったものの2キロ重い斤量を背負ったノームコアの決め手に屈してしまった。それでも、重賞制覇を可能な力を備えているのは明らか。5歳牝馬だけに残された時間は多くはないが、何とかタイトル獲得を、と願うばかり。

 ④着クリノガウディー、⑤着カテドラルは鋭さ比べで古馬より軽い54キロの斤量を生かして脚を見せた。1番人気のアドマイヤマーズは⑨着。騎乗したM.デムーロ騎手は「全然伸びませんでした。馬場を気にしてはいませんでしたが、直線はずっと左にモタれていて反応がありませんでした。久々でしたし、使って良くなってほしいです」とコメント。その言葉を受けてパトロールビデオを確認すると、直線では内へモタれるのを修正するのにかなり苦労し、ほとんど鞍上は追えていない。しかも、別定戦だけに斤量は同じ3歳牡馬より3キロも重い57キロ。この結果だけで大きく評価を下げる必要はまったくない。狙ったレースに向けてキッチリと仕上げてくる友道厩舎の管理馬でもある。次走での巻き返しに注意したい。

 

 

                                 text by 藤原 有貴

 

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