9月29日に中山競馬場で行われた第53回GⅠスプリンターズS(芝1200m・3歳以上・定量)は単勝2番人気に支持されたタワーオブロンドンが鋭く差し切って優勝。今夏はサマースプリントシリーズを戦い抜き、王者に輝くと、勢いに乗って短距離界の頂点に立った。長くコンビを組み、手の内に入れているC.ルメール騎手にとってはこれが初めてのスプリンターズS制覇。管理するのは美浦・藤沢和雄調教師。タワーオブロンドンは北海道日高町・ダーレ・ジャパン・ファームの生産馬。馬主はゴドルフィン。

 

それでは京増TMにレースを振り返ってもらいましょう。

 

 

 

【展開・ペース】 今開催の中山開幕週の芝は例年と比較しても速いタイムがマークされた。そこから日程が進む毎に段々と時計がかかってはきたものの、先行タイプが有利。そんな馬場状態を加味してスプリンターズSはモズスーパーフレアの逃げ切りに期待した。迎えた開催最終日。10Rに組まれていた勝浦特別(3歳2勝クラス)の勝ち時計はやや平凡な1分08秒4。もうスピード優先の高速馬場ではないのか?ここで少し嫌な予感はしたのだが・・・。レースは戦前の予想通り、スピードの違いでモズスーパーフレアがハナを奪取。前半3ハロン通過は32秒8

【レース分析】 タワーオブロンドンは、札幌から帰厩し、中1週で出走したセントウルSを勝利。そこから中2週という強行軍で大一番を迎えたが、動きには柔らかみがあって、気力の方も充実。過去のサマースプリント王者は、スプリンターズSの頃には状態維持が精一杯という感じだったが、これらとは明らかに異なる気配。さすが藤沢和雄厩舎だ。

 

▲ パドックを歩くタワーオブロンドン(撮影:yu~kun)

 

芝1200mに初起用となった函館スプリントSが80点くらいの仕上げ。そこから一戦毎に上向いて、ピークと思えるデキ。前走のセントウルSで出遅れているので、今回はスタートに細心の注意を払い、五分にゲートを出られた。馬群の切れ目からスムーズに外へ。直線は弾けるように伸びて、キッチリと逃げ馬を捉えた

 「今回は中山の速い馬場が心配でしたし、後ろからだと大変なのですが、能力が高いので勝つことができました。マークしたかったダノンスマッシュがすぐに内側へ行ったので、切り替えて大外へ行く形を。スムーズな競馬ができましたよ。(騎乗した)最初の頃からいい馬だと思っていて、スプリント路線で段々と力をつけてきましたね。またGⅠを勝てると思うので、引き続き応援して下さい」C.ルメール騎手。タワーオブロンドンの祖母は藤沢和雄師が管理したシンコウエルメス。1996年にデビュー。その後に骨折が判明したが、師や関係者の尽力によって何とか一命を取りとめることに成功。そこから約23年。血はつながり、誕生したタワーオブロンドンがGⅠを制覇。藤沢和雄調教師にとっても大きな大きな1勝だったに違いない。

 

タワーオブロンドンの4代血統表

 

 本命を打ったモズスーパーフレアは、若干太目だった前走の北九州記念から馬体重は4キロ減。体がグッと引き締まったのに加え、春当時より逞しさも増していた。今回は主導権を握り、思った通りの競馬はできた。ただ、想定よりも時計がかかったことでタワーオブロンドンの強襲を許してしまった。それでも、ハイペースで飛ばし、GⅠ②着は立派の一言。

 


 1番人気のダノンスマッシュは下がってくる馬を捌くのに多少、手間取って、勝ち馬よりあとから追い上げる形に。結果的に内枠が災い。それに苦境を跳ね返せるほどの地力は現時点でないのかもしれない。個人的な意見ではあるが、500キロ近くあった父ロードカナロアに比べて、ダノンスマッシュはひと回りコンパクトな馬体。スプリンターとしては重厚感にやや欠ける印象。マイルあたりに使ってくることがあれば新たな可能性が引き出されるのではないか

 

 

                                 text by 京増 真臣

 

 

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