第90回日本ダービー回顧

　5月28日（日曜）に東京競馬場で行われた第90回ＧⅠ日本ダービー（芝2400ｍ・3歳・晴れ・良馬場）は4番人気に支持されたタスティエーラが優勝した。管理する美浦・堀宣行調教師は2015年のドゥラメンテに続く日本ダービー2勝目。騎乗したD.レーン騎手は初勝利となった。タスティエーラは北海道安平町ノーザンファームの生産馬。馬主は（有）キャロットファーム。

それでは、レースを振り返っていきましょう。

▲17ドゥラエレードはスタート後に落馬し、競走中止

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【展開・ペース】　スタートの瞬間を振り返ると、逃げ候補と考えられていたドゥラエレーデが落馬。また内のトップナイフが躓いてしまいました。これにより展開が戦前の予想とは異なるものになりましたね。外からパクスオトマニカがハナを奪ったものの、2番手につけたホウオウビスケッツが無理に追いかけなかったことで前半1000ｍ通過は60秒4。大きく離れた2番手以降は超の付くスローペース。結果はポジショニングと速い上がりでまとめられるかがどうかが勝敗を分けました。

【レース分析】　タスティエーラ（4番人気）は2人引きでもテンションが上がることなくパドックを周回。体に無駄肉がなく、身のこなしは滑らか。皐月賞以上のデキに映りました。上位人気馬の中では最も前のポジション、好位の4番手を追走。勝負どころからは内のソールオリエンスに蓋をし、自由に動けないようにする絶妙な進路取り。これまで、テン乗りでは勝てないと言われた日本ダービーでしたが、そのジンクスを粉砕。D.レーン騎手は初騎乗でしたが、熱心に追い切りに跨ってコンタクトを深めてきました。19年の日本ダービーでは1番人気サートゥルナーリアに騎乗（④着）、翌年はサリオス（2番人気）とのコンビで②着。人馬ともリラックスしてレースに臨み、そして流れに乗れたように映り、このあたりは過去の経験が生きたように感じます。

　「とても特別な勝利になりました。勝てたことも素晴らしいですが、いつも協力していただいている堀厩舎、キャロットファームの馬で勝てたことが嬉しいです。この馬の強いポイントは速いスタートを切って、ポジションを取ってリラックスできること。いいポジションでリズム良く走れることです。すべて馬のおかげで、今日もそういった競馬ができました。以前乗せてもらって②着したサリオスも素晴らしい馬でしたが、数年後に同じ厩舎スタッフとチャンスをいただけたこと、結果を出せたことをとても嬉しく思います」とレース後にD.レーン騎手はコメント。極悪馬場、超ハイペースの皐月賞は勝ちに動いた分、最後に差されてしまったタスティエーラ。しかし、その経験が大きな財産となり、祭典の舞台では同様の戦法から己の力で勝利を掴み取りました。初騎乗ながら小細工せず、パートナーの力を信じて強気に乗ったD.レーン騎手の騎乗ぶりも賞賛されるべきでしょう。

▲タスティエーラの4代血統表

　ソールオリエンス（1番人気）はまだ体の緩さがあり、完成は秋以降となりそうですが、落ち着きがあって柔軟性に富んだ身のこなし。いい状態でした。スタートに細心の注意を払い、ゲートの出は他馬と互角。出脚もついてタスティエーラをマークするような位置で運べましたが・・・直線に向いてから少し追い出しを待たされたことと、スローの瞬発力勝負で微妙な位置取りの差が出てクビ差②着。ハーツコンチェルト（6番人気）は今季3戦目で使う毎に馬体が締まってきたし、歩様に勢いがあって迫力満点。日本ダービーにうまくピークを持ってこられましたね。スタートで後手を踏みましたが、スローと見るや、松山騎手は向正面でポジションを押し上げました。直線に向いても長くいい脚を使って③着と好走。通ったコースや、不向きな展開を考えれば、負けて強し。最も中身の濃いレースをしていたのはハーツコンチェルトです。

　べラジオオペラ（9番人気）はテンションが上がらず、全身をうまく使って動きに柔軟性もありました。インでジックリ構えて終い勝負。懸命に差を詰めてクビ＋ハナ＋ハナ差の④着。父はロードカナロア。それほど、スタミナを問われず、上がり勝負もマッチしたのかもしれませんが、デビューから3連勝でスプリングSを制した地力は伊達ではありませんでした。ノッキングポイント（15番人気）はテンションが高く、体形もマイル寄りですが、道中で折り合って運び、うまく脚がたまっていましたね。ポテンシャルは高く、気性面が成長してくれば秋は大きく飛躍して不思議ありません。