10月26日(土曜)に東京競馬場で行われた第13回GⅢアルテミスS(芝1600m・2歳・牝馬・馬齢重量・曇り・良馬場)は3番人気に支持されたブラウンラチェットが優勝。管理する美浦・手塚貴久調教師は当レース初勝利。騎乗したC.ルメール騎手は昨年に続く2勝目となった。ブラウンラチェットは北海道安平町ノーザンファームの生産馬。馬主は(有)サンデーレーシング。
それでは、レースを振り返っていきましょう。
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【展開・ペース】 最内枠からスタートを決めたミストレスが迷いなくハナに立ち、2ハロン目は11秒1と少し飛ばしましたが、その後は落ち着いた流れで半マイル通過は47秒7のスロー。必然的に後半は46秒1と速くなり、Bコース替わりの初日ということもあって、先行・内有利の決着になりました。
【レース分析】 勝ったブラウンラチェット(3番人気)はパドックから落ち着いた雰囲気。レースでも互角のスタートからスッと2番手につけて、その後は好位のインに収まる形。手応え十分に直線を向くと進路が開くのを待って、鞍上が本格的に追い出したのはラスト1ハロンの手前あたり。ラストは切れる脚を使って鮮やかに抜け出しました。
「凄くいい仔です。デビュー戦の時も乗りやすかったし、いい脚を使っていましたからね。今日は2戦目でしたが(馬が)怒らなかったし、落ち着きもあって、2番手(からの競馬)で完璧でした。道中はずっと息が入っていたし、自分のリズムで走って、最後はリードホースの後ろから抜け出して、凄くいい脚を使ってくれました。若いけど(それだけ)伸びしろがあるし、トップレベルにいける馬だと思います」とレース後にC.ルメール騎手はコメント。ダートで大活躍中の兄フォーエバーヤングより小ぶりな馬体な分、しなやかさがありますし、展開などに注文がつかないセンスの良さは両馬に共通するストロングポイント。好枠を生かした鞍上のエスコートも完璧でしたが、馬自体の資質の高さも改めて感じられました。
②着ミストレス(7番人気)は戦前の想定通り主導権を握り、馬場や展開の恩恵がありましたが、自身の上がりも33秒8ですから、普通なら逃げ切っていても不思議のないパターン。しかも新潟でデビュー戦を勝って中1週で再遠征でしたから、この結果には価値があります。馬格のある牝馬で、更に良化の余地も見込めそうです。自分が当日版で◎にしていたショウナンザナドゥ(2番人気)は③着。小柄な馬体をすっきりと見せましたが、細い印象はなく、返し馬でも走りは大きめで、切れのあるフットワーク。枠順もあって過去2戦より位置取りは後ろになりましたが、ラストまでしっかり脚を伸ばしました。上位馬とは内、外のコース取りの差がありましたし、小さな馬が周囲の馬には競り勝って、馬券圏内を確保した内容は期待通りか、それ以上。賞金を加算できなかったことは残念でも、先々が改めて楽しみになりました。
④着シホリーン(5番人気)は勝ち馬を見るような位置取りで、道中は若干、掛かり加減でも許容範囲内。ただ、直線を向いたところから⑥着馬に外から被せられるような形になり、馬群の中に進路を取ると前が詰まってスムーズさを欠きました。最後は捌きながら伸びてきて、脚を余す結果でしたし、この馬も間違いなく重賞レベルの能力があります。また、⑤着マイエレメント(4番人気)は今回の馬場、流れだと、スタートでアオって後手を踏んだのは痛恨。それでも、後方から外を回って上がり最速の32秒8の末脚を使って追い込んできたのですから、資質の高さは確認できました。1番人気で⑥着だったカムニャックは好馬体が目につきましたが、個人的な見た目では、体形的にマイルは少し短いかな、と感じました。枠順が外だったこともあり、勝ち馬と横並びでも前に馬を置けず少し力み加減で、初戦ほどの瞬発力は使えませんでした。川田騎手はレース後に「1週前(の追い切り)が動き切れていませんでした。今日はこの馬本来の走りではありません。また、改めてです」と語りましたから、状態面も完璧ではなかったのかも。それでも②着とは同タイムですから、将来性に関してはこの馬が一番でしょうか。今回の上位入線馬の中から複数の馬が来年の桜花賞に出てくるはず、というのが現地でレースを観戦した率直な感想です。
text by 五十嵐 友二
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