7月21日に函館競馬場で行われた第51回GⅢ函館2歳S(芝1200m・2歳)は単勝4番人気に支持されたビアンフェが優勝。果敢にハナを奪うと力強く押し切って2歳世代最初の重賞ウィナーに輝いた。騎乗したのは初めて函館リーディングを獲得した藤岡佑介騎手。管理するのは栗東の中竹和也調教師。ビアンフェは北海道新冠町・㈱ノースヒルズの生産馬。馬主は前田幸貴さん。
それではレースを振り返っていきましょう。
【展開・ペース】 スタート後、リュウノゲキリン、アザワク、ブルーパピヨンがスッと前に出る。ビアンフェは発馬ロスを挽回するとスルスルと前へ。前出の3頭がお互いの出方を窺っていた一瞬の隙を突くように馬群から飛び出してハナを奪った。前半3ハロン通過は33秒6のハイペース。結果、1分09秒2というレースタイレコードでの決着となった。
【レース分析】 勝ったビアンフェは皆さん、ご存知の通り、2015年の函館2歳S覇者ブランボヌール(父ディープインパクト)の弟。お母さんのルシュクルも函館芝1200mで新馬勝ちと北海道の洋芝がピッタリの一族である。デビュー戦は母や姉のように勝ち上がることは出来なかったビアンフェ。しかし、直線で追われると体全体を使ってバネの利いたフットワーク。②着に敗れたが、個人的には将来性の高さを感じ取っていた。
「函館3走目ということで少し苦しくなってくることを心配していましたが、スピードと能力で勝ち切ってくれました。レースのラップ自体は2歳にしては厳しかったですが、楽に先手が取れましたし、素晴らしいスピードがあります。直線は強い向かい風でしたが、力強く駆け抜けてくれました」と藤岡佑介騎手。今回の勝因を挙げるとすれば、鞍上が無理に抑えず逃げてノビノビと走らせたことだろう。ただ、2ハロン目の10秒4を含む、テンの2ハロン22秒6という数字は過去10年の当レースと比較しても速い部類。展開に恵まれての勝利ではない。函館2歳Sで逃げ切ったのは現在の施行時期に固定された2012年以降、ビアンフェが2頭目。過去を振り返っても最終週の荒れた馬場で押し切るのは簡単ではないことが分かる。種牡馬キズナは初年度産駒がデビューし、いきなりの重賞勝ちとなった。ビアンフェはまだスタートが安定しないものの、持ち前のスピードを武器に秋以降も活躍していくことだろう。
②着タイセイビジョンは出遅れたのに加え、初めての1200mだった分、後方で仕掛けながらの追走。それでも、ルメール騎手は安易に外へ持ち出さず、ロスなく3~4角を回り込んでくる。このコース取りも奏功し、直線で馬群がバラけると目立つ伸び脚。勝ち馬を捉えるには至らなかったが、しっかりと能力は示した。
プリンスリターンは追い不足なのに加え、馬体に余裕も残る中で新馬を勝っていた。追い切りでは終いに上々の伸びを見せたように上積みが大きかったのだろう。レースは逃げ馬を深追いせず、好位で脚をタメて追走。直線でカミソリの切れはなかったが、ジリジリと伸びて③着。手前の変換など、まだ若い面を残しているが、それだけ伸びしろもあるということ。馬体に実が入ってくれば楽しみだ。
④着パフェムリは直線で前が壁になってしまい、内ラチ沿いへ進路を切り替えるロス。また中団ではなく、③着馬と同様に好位で流れに乗れていれば馬券圏内に食い込めていたか。1番人気のレッドヴェイパーは発馬ロスと終始、内にモタれる若さを見せたのが悔やまれる。個人的には走るフォーム、レースぶりから距離が延びて更にパフォーマンスを上げそうに感じる。
私が本命を打ったアザワクは⑫着。鞍上がレース後、「芝を気にしている感じがありました」とコメントしており、適性で見劣った点は否めない。ただ、抜群のスタートを切って楽に先行とJRA勢相手でも通用するスピードは示した。もう少し積極的に運んでも良かったのではという思いも。かなりのポテンシャルを秘めた素材なのは間違いなく、今後のローテーは分からないが、チャンスがあれば札幌開催のすずらん賞に出走してもらいたい。
text by 藤原 有貴
※結果・成績・オッズ等のデータは、必ず主催者発行のものと照合し確認してください。