8月23日に札幌競馬場で行われた第56回GⅡ札幌記念(芝2000m・3歳以上・定量・晴れ・良馬場)はノームコア(単勝2番人気)が優勝。馬群を捌いて直線に向くと、力強く差し切って自身4つ目となる重賞タイトルを獲得した。鞍上は3月のGⅠ高松宮記念からコンビを組んでいる横山典弘騎手。管理するのは美浦・萩原清調教師。ノームコアは北海道安平町・ノーザンファームの生産馬。馬主は池谷誠一さん。
それでは、レースを振り返っていきましょう。
【展開・ペース】 内のドレッドノータスがハナを切る構えを見せたが、トーラスジェミニが軽く促しつつ、これを制して主導権を握る。前半1000m通過タイムは60秒3。これは前日の3歳以上1勝クラスと比較して0秒5遅く、グレードレースとすれば、スローペース。上がり勝負となった。
名手が再現した2008年札幌記念
【レース分析】 戦前、ノームコアには2つ心配な点がありました。ひとつは不安定なスタート。もうひとつは久しぶりの2000mだけに折り合いが付くかどうか。しかし、その不安は杞憂に終わりました。ノームコアはいつもよりゲートの出が良く、苦労することなく中団を確保。仕掛けたりすることなく、自然体でこの位置に収まったことが大きく、道中は掛かることなく追走。4コーナーでトーセンスーリヤ、ポンデザールの間に出来たスペースを突き、進路を確保。直線で左手前に替えると、ひと追い毎に先に抜け出したラッキーライラックとの差を詰め、余裕を持って差し切りました。ふと思い出したのは2008年の札幌記念。前年のGⅠ有馬記念を勝ち、断然の1番人気に支持されたのはマツリダゴッホでした。この馬らしい機動力を見せて4コーナーで先頭に立った姿がラッキーライラックとダブったのです。このまま押し切るだろうと誰もが思った次の刹那、外から鋭く迫ってきたのが横山典弘騎手が手綱を取ったタスカータソルテ。当時も横山典弘騎手は道中は内めで脚を温存し、3コーナー付近からスパート。1番人気を負かし、そしてガッツポーズまで同じ光景が2020年の札幌記念でも繰り広げられました。
「無観客ということがこの馬には良かったようで、いつもより落ち着いていてダイレクトに良さが伝わってきたので自信を持って乗れました。スタートと折り合いには注意しましたが、ほとんど考えた通りのレースができました。4コーナー手前まで凄く上手に来ましたし、具合が良かったので、追い出してからもよく伸びてくれました。これならこの秋も頑張ってくれると思います」とレース後に横山典弘騎手がコメント。昨年1月以来となる2000m起用ながら結果を出したことで、この秋の選択肢が大きく広がったのは言うまでもなく、GⅠ大阪杯優勝馬に完勝した点も価値大。心身ともにいいコンディションで臨めれば2度目のGⅠ制覇が期待できるでしょう。
GⅠ馬の意地見せたペルシアンナイト
②着に食い込んだのはペルシアンナイト(6番人気)。好走の予感は昨年の札幌記念にありました。その昨年は11番枠から大外を回って追い上げて0秒3差⑤着。当時、先着を許した顔ぶれはブラストワンピース、サングレーザー、フィエールマン、ワグネリアン。4頭中3頭は八大競走優勝馬でサングレーザーにしても天皇賞・秋で②着。それと比較しますと、今年のメンバーは非常に与し易い相手。そして前2走と違って良馬場で走れたことも好走要因に挙げられるでしょう。3コーナーからノームコアの辿った航跡をなぞるように進出し、②着に浮上。GⅠマイルCS覇者が健在ぶりをアピールしました。
ラッキーライラックは1番人気らしく積極的に2番手を追走。3コーナーを過ぎて逃げるトーラスジェミニに並びかけますが、相手が渋太く抵抗。交わすまでに時間がかかり、先頭に立ったところをノームコア、ペルシアンナイトに差されてしまいました。昨年のGⅡ中山記念も2番手追走から最後に甘くなって②着。好位、中団で脚をためて運ぶ形が最も力を出せるように感じますし、今回は後続のいい目標になってしまいました。ただ、牝馬ですからGⅠ宝塚記念の大敗を引きずることなく、いい走りをできた点は収穫ではなかったでしょうか。それにしても終わってみれば3頭出走したGⅠウィナーが①~③着。さすがは定量のGⅡ戦。夏は格より勢いと言いますが、スーパーGⅡはやはり格重視が正解のようですね。
text by 藤原 有貴
※結果・成績・オッズ等のデータは、必ず主催者発行のものと照合し確認してください。
【データ泣き笑い】 〇馬齢・・・今年は5歳→6歳→5歳で決着。唯一の3歳馬ブラックホールは⑨着に敗れた。 〇実績・・・③着までに入った3頭は重賞で2勝以上しており、またGⅠ勝ちもあった。 〇枠順・・・ノームコアが勝ったことで1枠に入った馬はこれで4年続けての勝利に。来年以降も最内枠に入った馬には要注意。 |