第56回フローラＳ回顧

　4月25日に東京競馬場で行われた第56回ＧⅡフローラＳ（芝2000ｍ・3歳・牝馬・馬齢・晴れ・良馬場）はクールキャット（単勝5番人気）が好位から抜け出して優勝。騎乗したC.ルメール騎手は2016年のチェッキーノに続く当レース2勝目。管理する美浦・奥村武調教師は当レース、初勝利。この結果、クールキャット、スライリーの2頭がＧⅠ優駿牝馬の優先出走権を獲得した。クールキャットは北海道洞爺湖町・レイクヴィラファームの生産馬。馬主は（有）シルクレーシング。

それでは、レースを振り返っていきましょう。

【展開・ペース】　好スタートを切ったアンフィニドールが一気に先制し、2～3ハロン目は11秒4、11秒3と速めのラップに。ただ、3コーナー手前までは1頭で後続を離しており、2番手以降のグループは全体に落ち着いた流れ。そのためにレースの上がり3ハロンの数字が速くなり、開幕週の馬場状態もあって、前めで流れに乗れた馬、馬場のインを走ってきた馬に有利な展開となりました。

不安一掃！クールキャットがＧⅠへ

【レース分析】　勝ったクールキャット（単勝５番人気）は外枠でも鞍上が積極的に促して好位置をキープ。戦前に懸念する声があった折り合いに関しても非常にスムーズで、直線を向いて追い出すと一歩前にいた②着馬を残り1ハロンあたりの地点で捉え、そのまま後続の追撃も封じました。

「前の方で運びたかったので、スタートから出していきました。すぐにいいポジションが取れましたし、別の馬の後ろに入って冷静でしたね。トビが大きくて切れる脚はないですが、長く脚を使うタイプなので、直線で外に出して徐々に加速していきました。新馬戦から能力を見せていた馬ですが、あれからパワーアップして体も大きくなり、いい筋肉がついてきましたね。重賞を勝てて良かったです」とレース後にC.ルメール騎手がコメント。大外から最後まで伸びていたＧⅢフラワーＣ⑤着のレースぶりや大柄な馬格などから、広い東京コースで新馬Ｖ時と同じ鞍上ならと思い、当日版の紙面で◎にしていましたが、予想していたより前の位置から能力を発揮させた鞍上の手腕には脱帽。母が長距離の重賞で健闘していた血統面からも、本番のオークスでも注目の1頭となりそうです。

▲クールキャットの4代血統表

強気に運び樫切符を掴んだスライリー

　②着のスライリー（14番人気）も2勝目を挙げた際に、後のアネモネＳの勝ち馬を破っていた比較などから△のシルシをつけていましたが、流れに乗れなかったＧⅢクイーンＣ⑩着を教訓に、東京コースでも積極的な立ち回りを見せて、オークスへの出走権を獲得。こちらは小柄な馬体なので、本番に向けては距離延長と状態面の維持もポイントになりそうです。

　③着ユーバーレーベン（2番人気）も互角のスタートを切りましたが、序盤で少し窮屈になってポジションが後ろに。上位2頭とは位置や内、外のコース取りの差もありましたし、②着馬にハナ差まで迫った末脚にはＧⅠ阪神ＪＦ③着の地力が窺えました。10キロ減の馬体も細くは映りませんでしたから、距離が延びる本番での巻き返しは十分に可能でしょう。馬群の内を突いてスムーズさを欠くシーンがあり、石橋脩騎手がレース後に「直線で塞がれたのが痛かったです、あれがなければ②着はあったと思います」とコメントした④着メイサウザンアワー（6番人気）も、次走以降に向けて覚えておきたいレースぶりでした。一方、1番人気で⑧着だったオヌールは戦前から、キャリア2戦の馬が初東上でどうかと見ていましたが、8キロの体重減は許容範囲内でも、揉まれる競馬になって経験の浅さが出た印象。伸びしろは感じられますから、今後の成長に期待したいところです。

text by 五十嵐友二