6月16日に函館競馬場で行われた第26回GⅢ函館スプリントSは禁止薬物問題の影響でダノンスマッシュら6頭が競走除外に。レースは単勝5番人気の伏兵カイザーメランジェが鮮やかに逃げ切って優勝。3度目の挑戦で嬉しい重賞初制覇。セントウルSまで計6戦で行われるサマースプリントシリーズの開幕戦を勝利。鞍上の江田照男騎手にとっては2012年にネコパンチで優勝したGⅡ日経賞以来のJRA重賞制覇に。トロットスターを管理した中野栄治厩舎に短距離界のスター候補が誕生した。カイザーメランジェは北海道新ひだか町の谷岡スタットの生産馬。馬主は友水達也さん。
それではレースを振り返りましょう。
【展開・ペース】 ハナ候補のシュウジ、そして積極的に立ち回ると考えられていたダノンスマッシュが競走除外に。先行タイプが手薄なのに加え、7頭立てと手頃な頭数でのレースとなった。スタートを決めたカイザーメランジェが先導役を買って出て前半3ハロン通過は34秒4。これは当日の3歳未勝利戦と同じ。稍重という馬場を考慮してもペースはかなり遅く、結果的に4コーナーを1、2番手で通過した2頭がそのまま連対を果たした。
【レース分析】 カイザーメランジェは前走で直線1000mに使われ、先行していたこともあって出脚がつくと自然と前へ。これまで芝では中団から差して戦果を挙げてきたが、馬の気に逆らわず、主導権を握る。先入観に捉われず、積極的に運んだ江田照男騎手の選択がピタリと嵌まる。道中は常に2番手のアスターペガサスを1馬身ほどリード。被せられてプレッシャーを受けなかった分、4コーナーを回っても手応えは楽なまま。最後までセーフティーリードを保ったまま逃げ切った。
騎乗した江田照男騎手は「行く馬がいなかったので、この馬のスピードを生かして行きました。道中もいい流れで手応えもあったので頑張ってくれると思いました。コンディションも良かったですね」とコメント。今回はすべてがうまく噛み合ったが、次走以降、楽にハナを切れる保証はない。控える形から結果を残せるようだと先に待つGⅠスプリンターズSでも狙いが立つ。
②着は昨年のGⅢ函館2歳S覇者アスターペガサス。6ハロンに戻した葵Sに続いての連対確保。確かに展開に恵まれた面は否めないが、古馬相手だった点も考慮すれば評価できる内容。稍重馬場で適度に時計がかかった点もプラスに作用したのではないだろうか。今後は1分06、07秒台の高速決着に対応して結果を出せるかに注目したい。
タワーオブロンドンはスタートの出は良かったが、初めての1200mだった分もあるのか自然と位置取りが下がって中団を進む。道中の重賞と思えぬほどペースが落ち着き、万事休すかと思われたが、直線に向くと外から鋭く追い上げて③着まで浮上。不向きな展開を考慮すれば負けて強し。これだけの脚を使えたのだから6ハロン戦にもメドが立ったと言える。
コラム『着眼』で私が推奨したダイメイフジは④着。前走の京王杯スプリングCでは2番手追走から見せ場を作っており、手頃な頭数なら思い切ったレースをすると読んだが、3番手に控える形。ただ、鞍上の松岡騎手は「返し馬でノメッていた」とコメント。水分を含んだ馬場が合わなかった部分もあったか。
text by 藤原有貴
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