9月6日に新潟競馬場で行われた第56回GⅢ新潟記念(芝・外回り2000m・3歳以上・ハンデ・晴れ・良馬場)はブラヴァス(単勝2番人気)が優勝。GⅢ新潟記念はサマー2000シリーズの最終戦として行われ、この結果、ブラヴァスはポイントを15とし、シリーズ王者に輝いた。鞍上は福永祐一騎手。管理するのは栗東・友道康夫調教師。ブラヴァスは北海道安平町ノーザンファームの生産馬。馬主は佐々木主浩さん。
それでは、レースを振り返っていきましょう。
【展開・ペース】 先手候補と目されたウインガナドルが主導権を握り、少し離れた2番手にサトノダムゼルが続く形。このままスンナリと隊列が決まるのかと思われましたが、各馬が意識的に開けていた内ラチ沿いのスペースを通ってジナンボーがスルスルと進出。3コーナー手前でウインガナドルを交わし、先頭に躍り出ました。動きがあった割にペース自体はあまり上がらず、前半1000m通過は61秒9。これは2010年以降で最も遅く、直線に向くと横に広がっての瞬発力比べが展開されました。
斤量増も苦にせずブラヴァスが躍動
【レース分析】 先週の新潟芝コースは直線で状態のいい馬場の真ん中から外を通った馬がよく伸び、また開催最終週ということもあって、かなり時計のかかるコンディションでした。結果的に勝ったブラヴァスは馬場のいい外から差し切ったように福永祐一騎手のコース取りのうまさが光りました。ポジション取りもまた絶妙。レースは前半のペースが非常に遅く、上がり3ハロンは33秒1。これでは、たとえ直線で外へ持ち出せたとしても、後方からでは差し切るのは困難。先行集団の直後の位置につけて直線に向けたのも勝因として挙げられます。
「前で運ぼうと思っていましたが、主張する馬がいましたからね。でも、馬の後ろで競馬がしたいと思っていたので、あの位置でも問題なかったです。3コーナーをいい形で入れましたし、直線に向く時は手応えがあったのですが、体が噛み合っていなくて前と後ろがバラバラでした。なので気持ちのいい感じではなかったのですが、それでも伸びてくれましたし、能力の高さを感じましたね。まだ伸びしろがありそうですし、これからしっかりしてくれば楽しみです」と福永祐一騎手。まだまだ成長余地を残す中で重賞を勝てたのは大きな収穫。またこれだけの上がり勝負の中で前走より1キロ重い56キロを背負い、斤量が軽く、瞬発力にも自信を持つ面々を負かした点も評価できます。ヴィルシーナの仔が重賞タイトルを獲得し、更なる高みへと駆け上がるのか、これからの動向から目が離せません。
復調示す走り見せたジナンボー
2年連続で②着となったジナンボー。枠順は昨年と同じ3枠5番。その昨年は4番手を進み、早め、早めの立ち回りから接戦を演じました。個人的な見方になってしまいますが、ジナンボーは掛かり気味に前、前で運んだ時の方が結果が出ており、メンタルが大切なように感じます。その点で仕掛けても反応が鈍く、進んでいかなかった前走のGⅢ七夕賞は走ることに後ろ向きになっているようにも見受けられました。再び鞍上に戻ったM.デムーロ騎手はスタート後、ジナンボーの気持ち、リズムを優先し、変に抑えることなく、一気にハナへ。昨年、先行して踏ん張れた経験も自信となっていたのかもしれません。前半1000m通過は61秒9のスローでしたからこの判断が見事に奏功。最後はブラヴァスの末脚に屈しましたが、復調を示しました。これでM.デムーロ騎手騎乗時は6戦5連対。手も合っていますね。
サンレイポケットはいつも素晴らしい脚を使いますが、2走前の下鴨Sのように僅かに差し届かないこともあるタイプ。それだけに新潟外回りというコースはぴったりでしたね。3、4コーナーで少し外を回るロスはありましたが、直線に向くとスムーズに馬場の外目へ。ブラヴァスの外から上々の伸びを見せて③着。重賞でも末脚が通用することを証明しました。このように直線の長いコースが舞台なら斤量差が縮まる別定の重賞レースでも大崩れはなさそうです。➃着サトノガーネットは31秒9という驚異的な上がり3ハロンをマーク。並みの馬なら最後方を進んでは掲示板に載ることすら難しく、この馬の非凡な瞬発力を信じ、坂井瑠星騎手が直線に賭ける腹を括ったレース運びに徹したからこそでしょう。
1番人気ワーケアは⑩着。ハンデ53キロは有利に映りますが、この時期の3歳牡馬と4歳以上牡馬の芝2000mでの斤量差は3キロですから、56キロ換算。決して軽いわけではありませんが、好位で上手に折り合って運べた割に直線に向くと手応えほど弾けず。極端な瞬発力比べが合っていなかったのか、状態がまだ本物ではなかったのか。敗因は判然としません。
text by 藤原 有貴
※結果・成績・オッズ等のデータは、必ず主催者発行のものと照合し確認してください。
【データ泣き笑い】 〇前走クラス・・・勝ったブラヴァスは前走GⅢ②着。②着ジナンボーは前走GⅢ⑨着だが、当時は1番人気。どちらも連対条件を満たしていた。 〇ハンデ・・・今年は56キロ→56キロ→54キロの馬で決着。53キロ以下の馬は⑤着が最高着順。1番人気に支持された53キロのワーケアは⑩着に敗れた。 〇レース間隔・・・中2週となったGⅢ小倉記念組の2頭は馬券に絡むことはできなかった。 〇斤量増+4、5歳の関西馬・・・該当するブラヴァスが見事に①着。来年も条件に合致する馬がいれば積極的に狙いたい。。 |