第54回スプリンターズＳ回顧

　10月4日に中山競馬場で行われた第54回ＧⅠスプリンターズＳ（芝1200ｍ・3歳以上・定量・曇り・良馬場）はグランアレグリア（単勝1番人気）が優勝。6月のＧⅠ安田記念に続いて連勝。これが自身3度目となるＧⅠ勝利に。また鞍上のＣ.ルメール騎手、管理するのは美浦・藤沢和雄調教師は2019年にタワーオブロンドンで勝っており、当レース連覇となりました。グランアレグリアは北海道安平町ノーザンファームの生産馬。馬主は（有）サンデーレーシング。

それでは、レースを振り返っていきましょう。

【展開・ペース】　大方の予想通り、モズスーパーフレアがハナを切りましたが、これに外からビアンフェが競りかけて前半3ハロン通過は32秒8。これは1分07秒1という好タイム決着だった2019年と同じ。時計のかかる今開催の中山芝を考慮すると、オーバーペースだったのは否めません。馬群が縦長になったことでダノンスマッシュあたりが絶好のポジショニングに。

牡馬を打ち負かし、2階級制覇

【レース分析】　例年と比較しても中山の芝は時計を要し、タフなコンディション。そして展開も勝敗を分けるポイントだと考えていましたが、グランアレグリアの圧倒的なポテンシャルが際立った一番でした。そのグランアレグリアは当日の馬体重が前走からプラス12キロ。藤沢和雄厩舎としては異例と言える前日追い（坂路で4ハロン54秒台をマーク）を敢行。それでも、いくらか体に余裕はありましたが、テンションは上がっておらず、精神面の成長を感じさせました。私自身、常々「超一流馬は必ずしも絶好調である必要はない」というのが持論。これで十分な仕上がり。スタートで出遅れた際はヒヤッとしましたが、後方を進み、スピードに乗り出してからはグングン加速。残り100ｍ付近であっさりとダノンスマッシュを捉え、2馬身差をつけたのは圧巻。軽い馬場であれば、更にパフォーマンスも上がりそうです。

「信じられないです。スタートがゆっくりでしたし、1200ｍのリズムを見つけられずに後ろからになりましたが、パニックになることはなかったです。直線は凄い脚でしたね。ペースが速かったので前の馬が止まる展開でしたが、この馬自身は最後まで伸びていました」とＣ.ルメール騎手。春はマイル王に輝いた女傑が、偉大な父（ディープインパクト）に産駒初の芝のスプリントＧⅠタイトルをプレゼントしました。

▲グランアレグリアの4代血統表

完成期を迎えたダノンスマッシュ

　ダノンスマッシュは馬体が研ぎ澄まされ、5歳を迎えて完成の域に達していますね。スタートで後手を踏みましたが、すぐにリカバーして4番手を追走。仮にスタートを決めていたとしても、グランアレグリアの末脚を封じ込められたかどうか。今回は相手を褒めるべきでしょう。アウィルアウェイは抜群の気合乗りで、フットワークは柔らかみ十分。いい状態でした。スッと控えて離れた最後方を追走。展開が向いたこと、そして終い勝負に徹した松山騎手の思い切った騎乗も好走要因ではありますが、直線の脚はグランアレグリアに匹敵するもの。地力強化を印象付けました。