8月28日(日曜)に札幌競馬場で行われたサマースプリントシリーズ第5戦 第17回GⅢキーンランドカップ(芝1200m・3歳以上・別定・晴れ・良馬場)はヴェントヴォーチェ(単勝6番人気)が力強く伸びて優勝。騎乗したC.ルメール騎手は17年エポワスに続く当レース2勝目。管理する栗東・牧浦充徳調教師は重賞初勝利。ヴェントヴォーチェは北海道日高町下河辺牧場の生産馬。馬主はエデンアソシエーション。
それでは、レースを振り返っていきましょう。
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【展開・ペース】 外のレイハリアが好スタートを切りましたが、内からオパールシャルムやヴァトレニが行く構えを見せると控え、前半3ハロン通過は34秒5。これは古馬GⅢとしては緩やかな流れ。そのために馬群は縦長にならず一団でレースが進み、更に開催後半の馬場で多くのジョッキーが内を避けたこともあり、直線入り口では横に大きく広がるような形に。こうなると外を回った差しタイプが台頭するのは容易ではなく、枠順や各馬のコース取りが明暗を分ける結果になりました。
【レース分析】 勝ったヴェントヴォーチェ(単勝6番人気)はスタートで他馬に寄られるシーンがあって後手に回りましたが、あまりペースが上がらなかったことによって、ここ2戦よりも道中は楽な感じで追走。勝負どころからも馬場の少し内めで、ギリギリいいところを通るような鞍上の見事な進路取り。馬もそれに応えて最後まで脚いろは乱れることなく、ゴール前で鮮やかに抜け出しました。
「もう少し前でレースをしたかったんですが、スタートして他馬とぶつかり、後ろからになってしまいました。それでも、内へ入れて3~4コーナーからはスムーズに走れましたし、最後はいい瞬発力を見せてくれました。上に行っても楽しみな馬です」とレース後にC.ルメール騎手はコメント。4月に中山の春雷Sをレコードと0秒1差の好タイムで勝っていながら、函館スプリントS、アイビスSDでは好結果を出せずにいましたが、ようやく本来の能力を発揮した形。先に向けては夏場に3戦したこと、ペースが上がった際への対応がポイントになりそうですが、それさえクリアできればGⅠのスプリンターズSに駒を進めても、上位候補に扱える存在といえます。
②着ウインマーベル(2番人気)は互角のスタートから行きっぷり良く好位を進み、4コーナーでは2番手グループの先頭に立って完璧な立ち回り。惜しかったのはラスト1ハロンのところで少し外にモタれ、③着馬との間を勝ち馬に突かれたことですが、現3歳世代ではトップクラスのスプリント能力、レースの流れに左右されない機動力を改めて示しました。③着ヴァトレニ(4番人気)は内から果敢に先行し、直線も鞍上は中途半端になるよりはと考えたようで、内ラチ沿いを走らせて馬券圏内を確保。展開利はありましたが、馬場の悪いところで最後まで粘った点は評価できますし、重賞初挑戦で別定戦の56キロだったことを考えれば上々の内容。今後は得意な洋芝以外の舞台で、どんな走りを見せるか注目したいところです。
一方、枠順になく形となったのが1番人気で④着のトウシンマカオで、大外枠から上位馬よりもかなりコースロスのある立ち回りに。直線での伸びは目立ちましたから、初めての1200mに関しては高い適性を見せたといえます。前2年の当レースで①②着だった⑥着のエイティーンガール(5番人気)も今年は明らかに展開が向きませんでしたし、5カ月の休み明けでしたから、次走がGⅠでも得意の道悪にでもなれば、と期待を抱かせる内容でした。自分が当日版の紙面で◎にしたレイハリア(9番人気)は残念ながら⑩着。ブリンカーを着用していたので、今回の展開なら逃げる戦法もあったのではと思いましたが、それも結果論。ただ、10キロ増の馬体は少し余裕を感じましたから、絞れてくれば見直す余地はあると考えています。
text by 五十嵐 友二
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