第28回エルムＳ回顧

　8月6日（日曜）に札幌競馬場で行われた第28回ＧⅢエルムS（ダ1700ｍ・3歳以上・別定・曇り・不良馬場）はセキフウ（単勝6番人気）が優勝。管理する栗東・武幸四郎調教師は当レース初勝利。騎乗した武豊騎手は1997年以来、当レースは2勝目となった。セキフウは北海道浦河町バンブー牧場の生産馬。馬主は中辻明さん。

それでは、レースを振り返っていきましょう。

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【展開・ペース】　ペプチドナイルはスタートを互角に出ましたが、隣のワールドタキオンの方が出脚が速く、更に外からタイセイサムソンが先手を主張したので1～2コーナーでは内で引かされるような形に。向正面に入る時には全体の隊列が決まり、5ハロン通過60秒4はこの日の馬場状態、３歳以上の重賞であることを考えると決して速くない流れ。それでも、最も遅いところのラップが12秒4ですから先行勢は息を入れにくく、スピードの持続力と、差しタイプには速い上がりに対応できる決め手の鋭さの鋭さが求められる展開となりました。

【レース分析】　勝ったセキフウ（6番人気）は出負け気味でしたが、鞍上もゲートを出たなりで進めるつもりだったようで気合をつけることはせず、自然体で後方に待機。道中の行きっぷりも良く、3コーナー手前でスパート態勢に入ってからもペースが落ちていないのに抜群の手応えで追い上げ、直線を向くと更に末脚の勢いを増して、鮮やかに前を捉えました。

　「強かったですね。少し揉まれ弱いところがあると思ったので、最後は外に出したいと思っていたんです。それが今回の大きなテーマでした。前が速くなりそうなメンバーだったのでマイペースで運びましたが、非常に乗りやすくて、思ったより楽に追走できましたし、4コーナーでの手応えも良かったです。今日の感じならまだまだやれそうですし、僕も久々に重賞を勝てて嬉しいですよ」とレース後に武豊騎手はコメント。テン乗りでも馬の特性をしっかりと掴み、落ち着いた騎乗で能力を引き出したレジェンドのエスコートはさすがでした。来道3戦目で中間の馬の状態も上がっているように映りましたし、もともと気分屋でも海外遠征など、豊富なキャリアのある実力馬ですから、別定ＧⅢで57キロなら、あっさり勝たれても納得。今後もスムーズな競馬ができれば、重賞のタイトルを重ねる可能性は十分でしょう。

▲セキフウの4代血統表

　②着が本紙で◎にしていたワールドタキオン（4番人気）で、道中２番手はこちらの見立てよりも少し前の位置取りでしたが、昇級緒戦で正攻法の競馬から一旦は抜け出して、後続に２馬身半差は立派の一語。中央に再入厩後の充実ぶりは目立ちますし、コースや馬場状態に注文もつかないので、順調なら重賞初制覇は時間の問題でしょう。③着のロッシュロープ（10番人気）はとにかく脚抜きのいい馬場が得意で、良馬場の時とは別馬と言っていいくらいの戦績なので、△のシルシをつけておきましたが、期待通りの走り。中団追走から手応え以上に渋太く伸びましたから、今後も天候、馬場状態が取捨の鍵になるでしょう。

　④着ルコルセール（5番人気）も前めで運んだ馬の中では4コーナーでの手応えが劣勢に映りましたが、そこからも粘り強い走りで③着とはハナ差。中間の調教VTRを見た際には最も具合が良く見えたくらいでしたし、５歳になって充実期を迎えているようです。そして⑤着にはホッカイドウ競馬のシルトプレ（13番人気）が健闘。後方追走から勝ち馬とは勝負どころでの反応の差が大きかったですが、直線では外から伸び脚が目立ちました。乾いた馬場だったら、という気がしましたし、今後は交流重賞で馬券を買ってみたいと思わせました。一方、2番人気で⑨着に終わったタイセイサムソンは逃げて②着馬にマークされましたが、ペースを考えると粘りは今ひとつ。ベストは左回りの印象を受けました。3番人気で⑫着のオーソリティは道中の行きっぷりは良かったので、敗因は初めてのダートよりも長欠明けで息が保たなかったか、小回りを馬群の内で運ぶ形は合わないのか、といったところでしょう。更に1番人気で⑬着のペプチドナイルも控える形になって序盤からリズムが悪く、揉まれ弱さが出た感じですから、上位人気馬はいずれも力負けではないと見た方が良さそうですし、条件さえ整えば巻き返しは十分に可能でしょう。

text by 五十嵐友二