8月24日(日曜)に札幌競馬場で行われた第20回GⅢキーンランドカップ(芝1200m・3歳以上・別定・晴れ・良馬場)は2番人気に支持されたパンジャタワーが優勝。管理する栗東・橋口慎介調教師、騎乗した松山弘平騎手とも当レースは初勝利となった。パンジャタワーは北海道、新ひだか町チャンピオンズファームの生産馬。馬主は(株)DeepCreek。
それでは、レースを振り返っていきましょう。
▲レース動画はコチラをクリック
【展開・ペース】 8枠の両馬が好スタートを切りましたが、ウインカーネリアンが気合をつけて前に出て、すぐ外のフィオライアも並ぶ形。それでも、ウインカーネリアンはハナを主張し、2ハロンを過ぎるあたりで単独先頭。前半3ハロン33秒6はGⅢとしては速い流れではなく、その後は最後まで11秒台のラップとなったので、ペースの分類としてはミドル。追い込み一手のタイプには分が悪い展開になりました。
【レース分析】 勝ったパンジャタワー(2番人気)はNHKマイルCから8キロ増の体重でも若干、余裕がある程度。スタートで出負けしましたが、すぐに二の脚で挽回し、道中は中団の外めで動きやすいポジションに。勝負どころから追い上げて行く時も手応えは十分で、直線の入り口から本格的に追われると力強く伸びて、前、内の馬たちを一気に呑み込みました。
「GⅠ馬として恥ずかしい競馬はできないですし、負けられないと思っていたので、まずはホッとしています。スタートがいい馬なので、(距離短縮は)あまり気にせず、リズム重視で運びました。外差しが得意なので、最後は外から差せればいいかなと思っていました。前を行かせて、その後ろの外めという理想的に位置で運べましたし、強い競馬だったと思います。どんな競馬でもできますし、まだ3歳ですから、今後が楽しみです。オーストラリアに向けても、いい前哨戦になったのかな、と思います」とレース後に松山弘平騎手はコメント。ゲートの出が今ひとつだったのはご愛嬌で、デビュー戦以来の1200mに難なく対応したセンスの良さは一級品。GⅢとしてはタイム自体は水準クラスですが、GⅠを勝った時と同様、馬群の外から鮮やかな差し切りを決めた勝ちっぷりは文句なし。むしろ本質的には1400mがベストでも、マイルよりは短距離がベターなのでは、と思わせるくらいの内容でした。秋に予定しているオーストラリアのゴールデンイーグルは芝1500mですが、陣営は速い流れのレースの方が次につながると考えて、ここを選んだとのことですし、その期待にも十分に応える走りでした。豪州の短距離からマイル路線はレベルが高いでしょうが、それでも楽しみな挑戦になりそうですね。
▲パンジャタワーの4代血統表
②着ペアポルックス(4番人気)は好位のインで先行両馬の直後。終始、スムーズな競馬で、この日の馬場(Bコース替わり1週目)、展開を考えれば完璧な立ち回りでした。勝ち馬には力負けですが、スパッと切れない反面、機動力があって自在に立ち回れる点が魅力。最近は外枠になることが多かったですし、好枠を引けば納得の好走と言えます。賞金を加算できたことも大きいですね。今後、相手が強くなっても大きく崩れることはないでしょう。③着カルプスペルシュ(3番人気)は前回、減っていた馬体が戻り、短期放牧を挟んだ効果は十分。函館から直前輸送だった前走と違い、現地調整で臨めたことも良かったですね。それでも、昇級緒戦が2歳時以来の重賞、しかも大外枠でしたから、馬券圏内を確保すれば立派の一語。あとは北海道の洋芝以外でも、同様のパフォーマンスを出せるかが最大のポイントでしょう。
④着ナムラクララ(8番人気)は外枠から好スタートを切りましたが、控える競馬を選択したので、序盤に抑えている時は行きたがっていました。途中からは折り合いましたが、同じように外を回った勝ち馬とは直線を向いてからの勢いが違いましたし、それを考えれば③着とハナ差は上々の結果。少なくとも枠順次第で②着馬とは互角に戦えたと思われます。更にハナ差で続いた⑤着ウインカーネリアン(1番人気)も8歳の年齢を思えば健闘ですが、今回は57キロで行き切れる展開。もう少し粘っていい気もしますし、相手関係が云々ではなく、自身がもうワンパンチという印象を持ちました。以下では⑦着のエーティーマクフィ(7番人気)が、直線で進路が狭くなり、エンジンがかかったのは外にも持ち出せてから。ゴール前の脚勢は勝ち馬と遜色なく、芝への適性を再確認できる伸び脚でした。一方、本紙で◎にしたレイピア(6番人気)は⑪着。スタート後に他馬に寄られて流れに乗れず、前走がスローペースだったので馬に戸惑いもあったようですが、もう少し積極的に立ち回ってほしかった気がしたことも確か。今回が力を出し切った結果とは考えていません。
text by 五十嵐 友二
※結果・成績・オッズ等のデータは、必ず主催者発行のものと照合し確認してください。