雨の府中で芽吹く才能
2017年10月28日(土)4回東京8日目11R第6回アルテミスS(GⅢ)は、単勝2番人気に支持されたラッキーライラック(父オルフェーヴル×母ライラックスアンドレース)が優勝。オルフェーヴル産駒による重賞制覇はロックディスタウンが制した札幌2歳Sに続き2勝目。管理するのは松永幹夫調教師。騎乗した石橋脩騎手はこれが今年の重賞2勝目となりました。
レース創設から今年が6回目となったアルテミスSですが、実は新馬を勝って臨んだ1戦1勝馬による優勝はこのラッキーライラックが初めてなんですよね。1戦1勝馬は例年、苦戦を強いられており、唯一、連対を果たしていたのは12年のアユサン。皆さん、ご存知の通り、翌年は桜花賞を勝ちました。ラッキーライラックも今後、大一番で大輪の花を咲かせる予感。そんな資格を備えた馬だと思います。
それではレースを振り返ってみましょう。
【パドック】
2歳牝馬によるレースにしてはイレ込んだり、うるさい仕草を見せる馬が少なかったですね。特に気配が良く映ったのは2頭。まずは2番人気のラッキーライラック。曳き手をグイグイ引っ張るように推進力があり、集中して歩けていました。もう1頭はウラヌスチャーム。約3ヵ月ぶりの実戦でも馬体に太目感はなく、キビキビと闊歩。1番人気のトーセンブレスは落ち着いて周回。決して気配は悪くありませんでした。
勝ち時計 1分34秒9(雨・良)
前・後半4F 47秒5 → 47秒4
12.4 – 11.2 – 11.8 – 12.1 – 12.3 – 11.4 – 11.5 – 12.2
【展開・ペース】
スタート後、サヤカチャンが飛び出し、ハナを主張。外からシンデレラメイクが接近したのに呼応し、サヤカチャンはスッと加速。テンの2F目こそ若干速くなりましたが、その後は緩やかに減速。レース中盤は各馬行きたがっていました。全体で見ると平均ペースですが、先行勢に有利な流れ。逃げるサヤカチャンは十分に息を入れて直線に向けました。
【レース分析】
勝ったラッキーライラックは好スタートから4番手を追走。直線に向くと石橋脩騎手は状態のいい馬場の真ん中に持ち出します。残り1Fで逃げるサヤカチャンの脚が鈍ったところを差してゴール。新馬戦は上がり3F33秒1と瞬発力勝負でしたが、雨馬場も難なくこなし、無敗での重賞制覇を成し遂げました。ロックディスタウンは開催最終週の洋芝でも、力を発揮して札幌2歳Sを制しましたが、オルフェーヴル自身がそうだったように産駒も馬場を選ばず活躍しますね。
さて、雨が続いた4回東京開催。石橋脩騎手は10月15日に4勝を挙げるなど芝のレースでは先週までに6勝。雨の影響を考慮し、冷静に馬場の”伸びる”部分をセレクトしたコース取りを何度も見せており、今回も馬場を読み切っていた印象。ペースを考えると位置取りもドンピシャリ。鞍上の手腕が光りました。レース後、石橋脩騎手は「直線でぬかるんでいたからか、力んでいましたが、反応が素晴らしく、前の馬を捉えられると思っていた。すごい馬。今後も無事に走ってくれたらいいですね」と語っていました。
②着は13番人気の伏兵サヤカチャン。適度に上がりがかかる馬場、そして緩やかなペースになったのも奏功した印象ですが、重賞でも長所であるスピードを存分に生かして逃げ粘りました。今後もスンナリと逃げられれば残り目に注意が必要です。
③着ラテュロスは関東圏への輸送を克服し、プラス8キロで出走。レースは2番枠から内をロスなく立ち回り、直線は最後まで止まることなく脚を伸ばしました。追ってからややシャープさにこそ欠ける感じでも、長くいい脚が使えるのがセールスポイント。「スピードに乗るのに時間がかかるので、そのあたりを踏まえて早めにいったが、今日は勝ち馬に瞬発力で負けた。距離はもう少しほしい」という秋山騎手のコメント通り、距離が延びるのは良さそうですね。
1番人気トーセンブレスは⑥着。「流れに乗れていい感じだったが、直線で他の馬が伸びたときに馬が戸惑っていた感じ。これからの馬ですね」とルメール騎手。大外からズバッと差し切った初戦のような他馬を気にせず走らせる形が合っているのかもしれません。
3番人気ウラヌスチャームは⑩着。新潟でのデビュー戦では上がり3F32秒0をマーク。出遅れや不向きな展開以上に今日は雨馬場に身上の鋭さを削がれた感じ。良馬場なら巻き返しがあって驚けません。
text by 藤原