名馬の証明

 2017年10月29日(日)4回東京9日目11R第156回天皇賞(秋)(GⅠ)は、単勝1番人気に支持されたキタサンブラック(父ブラックタイド×母シュガーハート)が優勝。今年の天皇賞(春)ではレコード勝ちし、今回は不良馬場を苦にせず勝利。天皇賞は春も含めると3勝目となり、これはテイエムオペラオー以来、史上2頭目の快挙。また通算GⅠ勝利数も“6”と伸ばし、ブエナビスタ、オルフェーヴル、ジェンティルドンナ、ゴールドシップに並びました。武豊騎手は天皇賞(秋)6勝目、春・秋通算では14勝目。管理する清水久詞調教師は同レース初勝利となりました。

【パドック】

 キタサンブラックは宝塚記念と同じ542キロの馬体重。相変わらず雄大な馬格ながらシルエットはスッキリ。文句なしの仕上がり。サトノクラウンはプラス10キロでしたが、太目感はなく、力強く周回。4番人気のソウルスターリングは少しテンションは高いものの、極端にイレ込むことはありませんでした。気配の良さが目立ったのはマカヒキ。集中してパドックの外目を周回。復調が感じられました。

ここからは京増TMによるレース回顧です。

勝ち時計 2分08秒3(雨・不良)

前・後半5F 64秒2 64秒1

13.2 – 12.5 – 12.9 – 12.5 – 13.1 – 13.0 – 12.4 – 12.0 – 12.7 – 14.0

 

【展開・ペース】

 台風の接近により、土曜から雨が降り続き、プレクラスニーが勝った1991年以来となる不良馬場で行われた今年の天皇賞(秋)。勝ちタイムを見ても想像を絶するタフな馬場だったことが窺い知れます。大方の予想通り、ロードヴァンドールがハナを奪って前半1000m通過は64秒2。後半1000mが64秒1ですから、平均ペースだったと思います。

【レース分析】

 ①着のキタサンブラックは、スタートでゲートに突進し、痛恨の出遅れ。しかし、そこからのリカバリーのうまさは、さすが武豊ジョッキー。4コーナーではインから差を詰めて、直線は馬場の外目に持ち出しながら一気に先頭へ。最後の1Fは14秒0と、さすがに脚いろが鈍りましたが、サトノクラウンの追撃を振り切って春秋天皇賞制覇を達成。

距離ロスは抑えられましたが、あれだけ馬場の悪くなった内を通って追い上げたキタサンブラック。脚を使わされて消耗したはずですが、それでも辛抱できるんですからは本当に強い馬。1番人気に騎乗しながら安全策で外を回らず、内を突いて勝負に出た武豊騎手。レース後のインタビューでは「最高のデキだと感じた。馬場はこなしてくれると思ったし、自信があった。ジャパンCでは日本代表として頑張りたい」とこたえていました。宝塚記念での惨敗からキッチリと立て直した厩舎力にも脱帽。ただ、これだけの走りを見せたわけですから、この後の反動が懸念されるところ。出走を予定しているジャパンCでどのような印を打つのか迷わされます。

 サトノクラウンは正攻法のレース運びから立派な②着。直線ではキタサンブラックに完全に前に出られましたが、最後まで渋太く脚を伸ばし、クビ差まで迫ったところがゴール。M.デムーロ騎手はレース後、「他の馬が馬場を苦にしていた中でも、最後まで頑張って走ってくれたと思う。勝ち馬が止まらなかった。仕方ない。残念です。」とコメント。道悪巧者のサトノクラウンですら、ノメッて脚を取られるような馬場でしたが、集中力を切らさずに走れたことは精神面の成長を示すものでしょう。

 ③着レインボーラインは①、②着馬の後を追うように4コーナーで内目を押し上げ、見せ場十分のレースぶり。「一瞬やったと思いました。内目をうまく立ち回って力が出せましたし、道悪でも大丈夫。状態も良かったです」という岩田騎手のコメントからもわかる通り、父はステイゴールドでこういった馬場も向いていたんでしょうね。

 ◎を打ったソウルスターリングは、4コーナーでポジションを下げ、直線入り口では前に入られてスムーズさを欠く感じに。それに、外を回るロスもありました。何にせよ、キャリアの浅い3歳牝馬に、今回の馬場は厳しかった印象。ジェンティルドンナ、ダイワスカーレットなどの名牝に肩を並べられるだけの存在だと思いますが、その評価が正しいかどうかは、次走以降に持ち越しですね。

text by 京増真臣/構成・藤原

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