It‵s YUTAKA Magic!

 2017年10月21日(土)4回東京6日目11R第20回富士S(GⅢ)は、単勝1番人気に支持されたエアスピネル(父キングカメハメハ×母エアメサイア)が優勝。これで重賞は3勝目。管理するのは笹田和秀調教師。直線に入ると馬場のいい外目へ持ち出して危なげなく押し切ってゴール。武豊騎手のエスコートのうまさが光ったレース。この勝利により、11月19日に京都競馬場で行われるマイルCSの優先出走権を獲得しました。

 レース時の馬場状態は”不良”。ちなみに富士Sは2011年にも不良馬場で行われ、①着エイシンアポロンは続くマイルCSを優勝。エイシンアポロンとエアスピネルは4歳という共通項も。歴史は繰り返すのか!?注目したいところ。

 また11年の②着アプリコットフィズは次走のオープン特別キャピタルSを勝ちました。


 それではレースを振り返ってみましょう。

【パドック】

 1番人気のエアスピネルは二人引き。前進気勢があってグイグイと引き手を引っ張るように周回。その前を歩いていた2番人気のペルシアンナイトはダービー以来の実戦でもマイナス2キロと研ぎ澄まされたフォルム。キビキビと歩けており、この2頭が特に良く見えました。4番人気のイスラボニータは時折、うるさい仕草を見せていましたが、歩様は柔らかく、太目感のない馬体。

 

勝ち時計 1分34秒8

前・後半4F 47秒8 47秒0

12.6 – 11.3 – 11.7 – 12.2 – 12.0 – 11.2 – 11.2 – 12.6

【展開・ペース】

 内からレッドアンシェル、外からマイネルアウラートが積極的に前へ。これにジョーストリクトリクラリティシチーエアスピネルが続く形。前半3F通過は35秒6。一旦、主導権争いは決着がついてレッドアンシェルが前に出たものの4F目に12秒2とペースを落としたところでマイネルアウラートが少し力み加減に。外からレッドアンシェルを交わして先頭を奪いました。2F続けて12秒台続いており、全体で見るとスローペースと言っていいでしょう。

 

【レース分析】

 勝ったエアスピネルマイネルアウラートの後ろでしっかりと折り合いをつけて追走。3コーナーを迎え、マイネルアウラートが外へ動いたのを見逃さず、内のレッドアンシェルとの間にできたスペースに侵入。直線に入ると武豊騎手は迷うことなく馬場のいい外へとエアスピネルをエスコート。離れた外から内で粘るレッドアンシェルを交わし、イスラボニータの追撃も封じました。

直線で馬場のいい外へ進路を取るのは内が荒れてきた開催最終週に行われる小倉2歳Sで武豊騎手がよく用いる戦法。素晴らしいのはコーナー部分ではロスを極力抑えて回り、且つ動きやすい進路もしっかり確保と作戦遂行・完遂のための下準備を完璧に行える点。武豊騎手のテクニック、戦略に思わず唸らされました。レース後、「道悪は苦にしなかった。どんな距離でも走るが、マイルが一番安定している」と武豊騎手。パートナーを称えると同時に、絶大な信頼を寄せていることが窺えます。

 イスラボニータは大外枠で前に壁を作れず、流れが落ち着いたこともあって道中は行きたがるシーン。それでも、クラリティシチーの後ろに馬体を収め、コーナーでの距離ロスを小さくして直線へ。さすがに先に抜け出したエアスピネルを捉えるまでには至りませんでしたが、しっかり脚を使って②着に浮上。

エアスピネルより1キロ重い58キロに加え、休み明けだった点を考慮すれば上々の内容と言っていいと思います。「この馬場で②着。勝ち馬は夏に使っていた馬。次走は楽しみ。良馬場でレースがしたい」とルメール騎手。東京スポーツ杯2歳Sをレコード勝ちし、好時計決着だった今年のマイラーズCではエアスピネルを負かしているわけですから叩いて、良馬場なら逆転は十分に可能でしょう。

 ③着は勝ち馬と同じキングカメハメハ産駒のクルーガー。スタート直後はスピードが乗らず、内田博幸騎手が手綱をしごくシーン。その後の道中も何度か鞍上が軽く気合をつけていました。直線に入ると前を走るイスラボニータが通った進路をなぞるように進出。残り1Fを過ぎてからは勢い良く伸びました。初めての1600m起用となった昨年のマイラーズCを勝っているようにマイラーとしての資質は非常に高く、半年ぶりを叩かれて順当に良化が進めば、マイルCSでも好勝負して不思議ありません。

 ペルシアンナイトは直線で馬場の悪い内目を通った分、鋭く伸び切れなかった印象。不良馬場だった1月のシンザン記念は不利もありましたが、「こんな馬場は合わないね」とM.デムーロ騎手がレース後にコメント。道悪巧者の多いハービンジャー産駒ですが、この馬は良馬場でこそのタイプなのかも。この敗戦で評価を下げる必要はありません。

 text by 藤原

 ※結果・成績・オッズ等のデータは、必ず主催者発行のものと照合し確認してください。
 
※記事中の写真は競馬ブックネットSHOPで販売中!
詳しくは写真かコチラをクリック!