競馬 研究ニュース

紙面で振り返る有馬記念

1990年12月22日 第35回 有馬記念
こちらは土曜日版

 1990年、平成2年の有馬記念は、オグリキャップに始まり、オグリキャップに終わったといっても過言ではないだろう。ラストイヤーの秋緒戦にあたる天皇賞は6着、続くジャパンカップは11着。「オグリは終わった」そんな声が巷には渦巻いていた。新勢力の3歳(当時の表記では4歳)ホワイトストーンが菊花賞2着からジャパンカップ4着を経て1番人気に支持され、オグリキャップは4番人気。当時の紙面にもオグリキャップの状況が好転することは難しいといった内容が綴られており、世代交代の文字が躍る。

 オグリキャップが何故ファンの心を掴んで離さないのか? それは「その強さのなかに潜む“危うさ”。ピンチをはね返す“ひたむきな走り”である」と主筆の秋田は答える。前年のマイルチャンピオンシップを勝って、そこから常識外れの連闘を敢行したジャパンカップ。ホーリックスにクビ差及ばなかったものの、ワールドレコード2分22秒2は長く語り継がれるであろう、と。しかし、その代償は大きかった。満身創痍で戦う姿に胸を打たれた人も少なくなかったはず。本紙の「オグリキャップの馬券は“声援”の一票としよう」は、当時のファンの気持ちを代弁していたといえよう。 

 当時、私は17歳。競馬はほとんど知らなかった。そんな私でもタケユタカという名前は知っており、オグリキャップという馬に乗るという。レース前から頻繁にテレビで扱われ、世間の注目度はMAXへ。そんな中、まだ青年だった武豊が硬い表情で取材陣に囲まれている姿があった。素人にも痛いほど伝わってくる緊張感。いや、悲愴感と言っていいかもしれない。「そんなに凄いことなんか?」、競馬を知らない学生が興味を持った瞬間だった。

 よくよく聞いてみると、オグリキャップは凄い馬だった。ただ、今回がラストランになるが、まず勝てないだろう、と。一縷の望みを託しての武豊ジョッキー起用なんだということを知った。素人だけに「オグリキャップは終わっている」という話に疑いなど微塵もなく、そういうもんなのかと思った記憶がある。

 結果、こんなことがあるのか! こんな物語のような結末があるのか! 下り坂に入ったチャンピオンが最終戦で不死鳥のように復活する姿に衝撃を受けた。もう終わっていると鵜呑みにしていただけに衝撃の大きさは半端ではなかった。コーナーで西日を浴びながら、馬群の外から上がっていくオグリキャップ。直線の叩き合いから抜け出すオグリキャップ。入線後、ポッーンとオグリを労う武豊。「めちゃくちゃ格好ええやん!」こうして、また一人の競馬中毒者が誕生することに。合掌。 【小林】

(文中敬称略)

 

 

 

1995年12月24日 第40回 有馬記念

 

 今年と同じくクリスマス・イブ決戦となった1995年、平成7年の有馬記念。この年はサンデーサイレンス産駒が大活躍。日本ダービー(タヤスツヨシ)、オークス(ダンスパートナー)などGⅠを4勝し、ついに初の種牡馬リーディングを獲得。同産駒からは同年の皐月賞馬ジェニュインがエントリー。吹き荒れたSS旋風も手伝って単勝3番人気と支持を集めていた。

 

ダイナガリバーが勝った86年以来の12頭立て。当時のあなたの夢は?

オグリキャップ、トウカイテイオーが“奇跡”を起こした有馬記念。本紙はナリタブライアンの完全復活に賭けた!

 

 1番人気に推されたのはヒシアマゾン。ジャパンカップでは強烈な末脚を駆使して日本馬最先着となる②着。前年の有馬記念は完敗の②着だったが、当時のファンは牡馬をなぎ倒すシーンに期待を寄せた。そして2番人気は連覇を狙って参戦してきたナリタブライアン。この年は春に故障(股関節炎)を発症し、その後は低迷。しかし、前年、3馬身差をつけた勝ちっぷりが印象深く、鞍上にはジャパンカップに次いで2度目の騎乗となる天才、武豊騎手。進化を続ける女傑と復活を期す三冠馬が6枠に同居した。

 

池田勇孝のマル秘穴馬券(土曜版)

池田勇孝のマル秘穴馬券(日曜版)

 

 優勝したのは3歳(旧4歳)マヤノトップガン。日本ダービー当日に中京で500万を勝った馬が僅か5カ月後に菊花賞を制覇。その勢いに乗って参戦した有馬記念はスタートから先頭に立つと鮮やかに逃げ切って勝利。2周目の1~2コーナーでペースを落とし、息を入れた田原騎手のうまさも光った。現役最強と謳われたナリタブライアンを蹴散らし、翌年以降はマヤノトップガン、サクラローレル、マーベラスサンデーの3強時代へ。そんな時代の移り変わり、節目を感じさせる風が吹いた有馬記念だった。

 

 

 95年のあと、有馬記念がクリスマス・イブに施行されたのは2回。2000年はテイエムオペラオーが京都記念からの連勝を8に伸ばし、古馬王道GⅠグランドスラムを達成。そして2006年は凱旋門賞で敗退後に帰国したディープインパクトがジャパンカップに続いて本来の末脚を発揮して圧勝。どちらも1番人気がキッチリとファンの期待に応えた。さて、11年ぶりとなるクリスマス・イブ決戦。キタサンブラックがラストランを勝利で飾り、中山に“まつり”が響き渡るのか?それとも、あの時のように世代、主役交代を告げる風が吹くのか?しっかりと現場で見届け、胸に刻み込みたい。【藤原】

 

※結果・成績・オッズ等のデータは、必ず主催者発行のものと照合し確認してください。