4月20日に行われた第16回GⅢ福島牝馬Sは単勝4番人気のデンコウアンジュが直線に向くと豪快に差し切って優勝。2015年のGⅢアルテミスS以来、約3年半ぶりにJRA重賞を制した。また鞍上の柴田善臣騎手にとっても約2年5カ月ぶりとなる嬉しい重賞制覇となりました。管理するのは栗東・荒川義之調教師。勝利したデンコウアンジュは5月12日に東京競馬場で行われるGⅠヴィクトリアマイルの優先出走権を獲得。デンコウアンジュは北海道浦河町・磯野牧場の生産馬。馬主は田中康弘さん。
それではレースを振り返りましょう。
【展開・ペース】 カワキタエンカが主導権を握ったのは大方の予想通りでしたが、昨年のこのレースで②着に逃げ粘った時の前半5ハロンが59秒0に対し、今年は62秒2ですから道中は、かなり緩い流れとなり、勝負どころでも馬群の内目にいた馬は少し窮屈な感じで渋滞状態に。結果的に外目をスムーズに運べた差しタイプの馬が、馬券圏内を占めることになりました。
【レース分析】 勝ったデンコウアンジュ(4番人気)は道中、後方で折り合いに専念。上位馬の中でも最も最後に仕掛けて決め手を生かし切りましたが、このレースは前2年が④③着と堅実に駆けていて、今年は頭数も手頃と、好走できる条件も整っていました。ただ、6歳の春を迎えて、以前よりもレースぶりが安定してきましたし、差して後続に2馬身半差をつける勝ちっぷりも鮮やかでした。
騎乗した柴田善臣騎手も「いつも鋭い走りをする馬で期待していました。道中のペースは落ち着きましたが、折り合いはついていましたし、終いは思っていた以上に切れましたね。東京でも32秒台の脚を使えるので、今日くらいリラックスして走れれば、GⅠでも面白いかも知れません」とコメント。確かにヴィクトリアマイルでも17年に②着の実績がありますから、相手強化でも注意が必要になりそうです。
②着フローレスマジック(1番人気)は勝ち馬よりも一歩前の仕掛けで完敗ですから内容的には少し物足りない印象を受けましたが、オープンでも能力が遜色ないことは3歳春の戦績からも明らかですし、今後も牝馬同士のGⅢなら上位候補の扱いが必要でしょう。
勝ち馬の次に注目したい走りを見せたのが③着ダノングレース(2番人気)で、スローを見越して早目に動いた鞍上の判断は悪くなくても、馬群の外を回って、上位馬の目標になる格好になってしまいました。昇級戦だったことを考慮すれば中身は上々で、昨秋以降の充実ぶりは本物と言っていいでしょう。
◎に期待した⑥着ランドネ(3番人気)は前走の中山牝馬Sと同様、内で脚をタメる戦法を選択。折り合いもついているように映りましたが、後続が仕掛けた時に動きにくい位置にいて、直線で内を突くと進路がなかったのも前回と同じ。待機策への対応も含めて、今回も参考外といえるレースぶりでした。⑤番人気で⑨着のカワキタエンカは以前の渋太さが見られませんが、今回に限っては鞍上がテン乗りだったせいか、結果的にペースを落とし過ぎた印象。平均的なラップを刻んで逃げた際には、変わる可能性は残していると思います。
text by 五十嵐
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