8月18日に札幌競馬場で行われた第55回GⅡ札幌記念(芝2000m・3歳以上・定量)は単勝3番人気に支持された昨年の有馬記念覇者ブラストワンピースがゴール寸前で差し切って優勝。春シーズンは結果が出なかったが、川田将雅騎手とのコンビに替わって見事に復活。弾みをつけて10月6日にパリロンシャン競馬場で行われる凱旋門賞へと向かう。管理するのは美浦・大竹正博調教師。ブラストワンピースは北海道安平町・ノーザンファームの生産馬。馬主は(有)シルクレーシング。
それではレースを振り返っていきましょう。
【展開・ペース】 スタートを決めたエイシンティンクルが単騎先頭。大外枠に入ったクロコスミアはテンに仕掛けて2番手まで押し上げる。更にサングレーザー、ワグネリアンも積極的に前へ。向正面に入るとエイシンティンクルが後続を離して逃げ、やや馬群は縦長となったが、1000m通過は59秒9という平均ペース。水を開けられた2番手以降に関してはゆったりとしたペースだったはずで、先行勢と内をロスなく立ち回った馬に有利な展開。
【レース分析】 最内枠に入ったブラストワンピース。それほど出脚が速いタイプではなく、私は外の馬たちに前に入られて、位置取りが後ろになってしまうのではないかと考えた。ましてペースが落ち着きそうなメンバー構成なのに加え、Cコースに替わって内も有利な馬場。外へ持ち出して追い上げては間に合わない。そのあたりを考慮し、印を△にとどめた。
パドックに登場したブラストワンピースは多少、腹回りに余裕があるものの、これは馬体的な特徴。体全体には緩みがなく、堂々と周回。海外遠征を控えてはいるが、しっかり仕上げてきた印象を受けた。スタート後、川田騎手が仕掛けて流れに乗せ、隣のクルーガーとのポジション争いを制して中団に陣取る。いい形で1、2コーナーへ向かえた。3コーナー手前から上昇を開始したが、安易に外へは持ち出さない。内目にこだわり、ロスを抑えて4コーナーを回り切る。直線に向いて一瞬、前が壁になったが、狭いスペースからスルリと抜け出すと力強く伸びてサングレーザーを捉えた。
「雰囲気良くレースに臨めました。内枠で苦しい形になりましたが、最後は力で捩じ伏せてくれました。次を見据えての競馬で結果を出せたし、胸を張って次走に臨みたいです」とレース後に語った川田将雅騎手。中団の外目を追走し、後続を待たずに早目に仕掛けた有馬記念の走りには驚かされたが、今回の器用なレース運びには脱帽。アダになると見ていた最内枠を存分に生かしての勝利は成長の証だ。後日、凱旋門賞でも川田将雅騎手とのコンビで挑むことが発表となった。3歳時と比べて、ひと皮剥けたブラストワンピースがどんな走りを見せるのか。本番が楽しみになる勝利となった。
②着は昨年の覇者サングレーザー。10番枠から迷わず前へ。徐々に内に進路を取り、インの3番手に潜り込んだ。サングレーザーは知られている通り、掛かる面があり、折り合いが浮沈の鍵を握るタイプ。2度目の騎乗ながらリスク承知で先行させ、内で上手に我慢させた岩田康誠騎手の手腕、度胸にレース中盤の向正面で胸が熱くなった(私の本命でもある)。直線では一旦抜け出したものの、最後はクビ差交わされての惜しい②着。今回に関しては勝ち馬を褒めるべきだろう。エアグルーヴ以来となる連覇は成らなかったが、素晴らしいレース内容だった。
フィエールマンは上位2頭に比べると外を回るロスがあった。また直線に向いたところで内からペルシアンナイトに前に入られる場面。これの外へ進路を取ったところが残り1ハロン標識付近。そこからグングン伸びて0秒2差まで追い上げた。敗れはしたが、改めて性能の高さを示した形。何ら悲観すべき点はない。
ワグネリアンは大阪杯以来の実戦だったが、プラス4キロという数字以上に馬体が逞しくなった印象。映像で見る限りだが、最終追い切りの動きは以前と比べてもとにかくパワフル。神戸新聞杯後は体調が整わなかった経緯などがあり、印は▲としたが、まとめて負かすならこの馬だと考えていた。期待に反し、直線で伸び切れずに④着に終わったが、両前を落鉄していたとのこと。まったく力負けの印象はなく、順調であれば、この先、大仕事をやってのけられるのではないか。個人的にこの秋、最も注目したい馬がワグネリアンだ。
text by 藤原 有貴
※結果・成績・オッズ等のデータは、必ず主催者発行のものと照合し確認してください。