勝利引き寄せた鞍上の腕と頭脳
2018年3月3日(土)2回中山3日目11R第13回オーシャンS(GⅢ)は単勝10番人気の伏兵キングハート(父オレハマッテルゼ×母ラブハート)が優勝。この勝利により3月25日に中京競馬場で行われるGⅠ高松宮記念の優先出走権を獲得。管理する星野忍調教師は2012年、ネコパンチで制した日経賞以来となるJRA重賞4勝目。鞍上は今回が2度目の騎乗だった北村宏司騎手。絶好のポジションでレースを進め、直線では激しい追い比べを制して見事、勝利に導いた。昨秋のスプリンターズSは賞金不足で出走が叶わなかったキングハート。2歳秋のデビューから25戦目にして、いよいよ頂上決戦の舞台へ。高松宮記念は父オレハマッテルゼが待望のGⅠ初制覇を成し遂げたレースでもある。
それではレースを振り返ってみましょう。
勝ち時計 1分08秒3(晴・良)
前半3F → 後半3F 33秒5 → 34秒8
11.9 – 10.6 – 11.0 – 11.4 – 11.3 – 12.1
【展開・ペース】
同じく良馬場で施行された17年(勝ち馬:メラグラーナ)の前後半3ハロンが33秒6→34秒7=1分08秒3とほぼ同じバランス。勝ち時計も馬場差を考慮すると例年並みの水準。今年はラインスピリットが好スタートを決めて飛び出したものの、気合をつけて追い上げたネロが先制。序盤、ネロが2馬身ほど後続を離して逃げていたが、決して自滅するようなペースではなく、粘りに粘って0秒1差④着と健闘。キングハートは終始、4、5番手を追走。流れを考慮すると絶好と言えるポジションでレースを進めることができた。
【レース分析】
キングハートはプラス6キロの馬体重。パドックでは多少、太く見えたのは私だけではないはず。ただ、調教履歴を引っ繰り返して調べてみると、前走時は坂路のみの調整だったのに対し、この中間は坂路・コース併用で丹念に乗り込みを消化していた。結果を見ても、馬体増はそれだけ状態が良かったという証だったのではないだろうか。
「相手なりに走れる馬なので期待していたんです。スタートを決めて楽に追走できました。ズルいところがあるのでそんな面を出さないように直線は馬体を併せていきました。このあと無事にいってほしいですね」と北村宏司騎手。
その言葉通り、3、4コーナーではいつでも先頭に並びかけられる抜群の手応えだったが、他馬より意識的に追い出すのを我慢。直線では前を行くレーヌミノルの外から馬体を併せ、急坂を上がったところで先頭。最後はナックビーナスの追撃を凌ぎ切ってゴール。キングハートが力をつけていることも確かだが、パートナーの性格を理解してプラン通りにレースを進めた北村宏司騎手の手腕も光った。馬体が立派に映ったということは良化余地を残しているとも考えられ、もう一段界の上積みが期待できるはず。高松宮記念でも大物食いがあって驚けない。
ナックビーナスは発馬で躓いたが、横山典弘騎手は走りのリズムを整えつつ、スーッとキングハートの直後まで進出。スタートでロスがあるとレースの入り方は難しいものになるのが常だが、サラッとリカバリーしてしまったのにはビックリ。昨夏のキーンランドC以降、芝1200mという条件では大崩れしていないナックビーナス。2年続けて②着に敗れたが、確かな成長が感じ取れた。
ダイメイフジは前3戦の前半3ハロン通過が35~36秒台のスローペース。一転、流れが速くなったことで鞍上が促しながらの追走に。それでも、直線に入ると圏外と思える位置からグイグイ伸びて③着。重賞でも勝ち負け可能な脚力があることを示した。
④着は逃げ粘ったネロ。手綱を取ったミナリク騎手は「私がこれまで乗った中で一番脚の速い馬。こんな経験が出来て良かったです。スタートが決まって戦略通りに先頭に立てたし、流れも良かった。最後は差されてしまったけど、馬はとても頑張ってくれました」とコメント。そんなミナリク騎手は来日後、4勝を挙げているが、その4コーナーの通過順を調べてみると1、2、1、4番手。先行して粘る、保たせる技術に長けている印象。先行タイプに騎乗した際が馬券的な狙い目と言えそうだ。
ビップライブリーは直線に入ってキングハートの外へ進路を取らざるを得ず、外へ出そうとしたところを今度は勢い良く伸びてきたナックビーナスに蓋をされる形に。ゴール前の伸びは良かっただけに、スムーズに前が開いて追えていれば際どい勝負になったはず。悔しさの残る結果となってしまった。
text by 藤原
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