5月26日に東京競馬場で行われた第86回GⅠ東京優駿(日本ダービー)は12番人気の伏兵ロジャーバローズが2番手から逃げ馬を捉えて抜け出すと、ダノンキングリーの追い上げをクビ差凌ぎ切ってゴール。元号が変わり、令和最初のダービー馬に輝いた。2分22秒6という勝ち時計はダービーレコード(従来のレコードは2015年にドゥラメンテがマークした2分23秒2)。手綱を取った浜中俊騎手は6度目の挑戦で嬉しい日本ダービー初制覇。管理する角居勝彦調教師にとっては2007年のウオッカ(今年3月にこの世を去った)以来、2度目の戴冠となったロジャーバローズは北海道新ひだか町・飛野牧場の生産馬。馬主は猪熊広次さん。

 

 

それではレースを振り返っていきましょう。

 

 

【展開・ペース】 ロジャーバローズが最内枠から促してハナを切ろうとするが、1コーナーに入るところで外からリオンリオンがこれを交わして先頭。リオンリオンは主導権を握ってからも極端にペースを緩めず、2番手以下を離していく。57秒8という前半1000m通過タイムは高速馬場を考慮してもかなり速いペースだった。

 

 

【レース分析】 ロジャーバローズは初めての東上となったスプリングSで⑦着。激しくイレ込み、尋常ではないほど暴れていて力を出せる精神状態ではなかった。その姿を鮮明に記憶していたが、この日はテンションがそれほど上がらず、馬体も絞り込んで、いい状態に映った。それでも、ここまでの走りを見せるとは正直、思いもしなかった。最大の勝因として挙げられるのはやはり浜中俊騎手の好判断、そして好騎乗だろう。レースは前半1000m通過57秒8のハイペース。2番手に収まったロジャーバローズにとっても厳しい展開ではあったが、直線に向くと後続を待たずに追い出し、リオンリオンを交わして残り2ハロン地点で先頭。迷いのない強気の仕掛けからCコースに替わって絶好と言える馬場コンディションも味方に押し切った。

騎乗した浜中俊騎手は「ビックリしています!ゴールの瞬間は残っているかなと思いましたが、分かりませんでした。無になって頭が真っ白になりましたよ。ロジャーバローズにとってはペースが速くなってほしいと思っていたので、一番いい展開になってくれました。後ろを待たずに追い出し、坂を上がってからも、ひと踏ん張り辛抱して一生懸命走り切ってくれましたよ。持久力勝負が得意でタフさが武器の馬。ダービー馬になりましたし、これから先も期待できるでしょう」とコメント。秋は凱旋門賞への挑戦するプランも発表された。新時代のダービー馬が海を渡ってどんな走りを見せるのか興味は尽きない。

 

ロジャーバローズの4代血統表

 

 ダノンキングリーはいくらかうるさい仕草は見せていたが、この程度は許容範囲内。馬体の張りの良さは際立ち、シャープな脚捌きと気配はかなり良かった。レースでは7番枠からスタンド前で内に入れて、5番手のインで折り合いに専念。3〜4コーナーはそのまま内を通って追い上げられた。勝ちパターンに持ち込み、完璧な騎乗ではあったが、最後は勝ち馬の渋太さに屈した。

 ヴェロックスも皐月賞の時よりもうるさい感じだったが、特に問題はなく、中身の濃い攻めを積んで馬体重は8キロ増。逞しさが増して、好感が持てた。前を行くダノンキングリー、後ろのサートゥルナーリアを意識したポジショニング。直線もしっかり脚を使って、一旦は前に出られたサートゥルナーリアを差し返しているが・・・③着。展開のアヤもあったように思う。

 

 

 サートゥルナーリアはパドック、本馬場入場ではイレ込むことなく堂々とした姿。変化が見られたのは待避所からゲート裏に向かうあたり。テンションが上がって首を上下に激しく動かす様子がターフビジョンに映されていた。ゲート入り後はジッとしていられず、1馬身ほど出遅れ。それでも、レース自体はハイペースで流れたから、極端な影響はなかったはず。4コーナーから追い上げを開始し、ェロックスを交わして一旦は前に迫ったものの、ラスト1ハロン付近から脚いろが鈍ってしまった。外を回ったロスに加え、ロードカナロア産駒でもあり本質的に2400mは長いのかもしれない。

                                 text by 京増真臣

 

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