桜花賞、レーヌミノルが勝った。開業時から担当している本田優厩舎の管理馬である。今になっても、ドキドキ感、ワクワク感、喜びと感動がおさまらない。20年以上トラックマンをしているので、過去にも担当厩舎の管理馬が重賞を勝ったことは多々あるし、G1を勝ったこともある。そういう時、自分自身が馬券をゲットしていれば、喜びの感情が芽生え、馬券を購入していなければ、“勝って良かったね”と思う程度。担当厩舎がG1を勝って、尚且つ馬券で大儲けした秋華賞のティコティコタックの時でさえ、極端な感情移入はなかった。最近では仲のいい松下武士厩舎がカラクレナイで勝ったフィリーズRは嬉しかったが、今回とは比べものにならない。今の私、基本的に馬券は少額投資。“3連複一頭軸で万馬券狙い”のスタイルである。応援馬券で単勝というスタンスもない。今回の桜花賞、レーヌミノルをずっと取材していたことから、かなり自信があったが、前日に3連複のオッズを確認して、一番人気のソウルスターリングが3着以内に絡んだ時点で配当が思ったほどつかないことに気づいた。だから、ソウルスターリングが4着以下に沈むことを期待しつつ、ソウルスターリングが力通りに走った場合に備え、馬連で一点だけ抑えることにした。

 結果はレーヌミノルが1着、ソウルスターリングが3着。馬券的には一番アカン結果です。本来なら悔しさと虚しさが溢れるところだが、今回はそんなことはどうでも良かった。レーヌミノルが勝ったこと、その事実が純粋に嬉しかった。勿論、紙面の予想がヒットしたこともり、かなりの達成感はあったが、それとは別の感情。ただただ、厩舎関係者への祝福と感謝の気持ちが勝っていた。こんなことは初めての経験。何なんだろう?何故なんだろう?今の時代、合同取材、共同会見が当たり前。取材する側としては面白みが薄くなっている。そんな中、本田調教師をはじめ、厩舎スタッフは私の単独取材に清く応じてくれる。本当にありがたいし、やりがいがある。そして、何よりも楽しい。そんな厩舎の管理馬、不器用な性格ながらも義理人情に溢れる調教師、気心の知れた助手さんと厩務員さん、常に本音で向き合ってくれる親切丁寧な担当者の馬だから、これまでの努力や苦悩が結果として表れたことが素直に嬉しく、感動できた。その偉業に携われたことに幸福感で埋め尽くされた。今年の桜花賞は、私にとって、生涯のベストレース。これからも他人の幸せや成功を心から喜べる自分になれるように成長したい。そう思わせてくれて、本当にありがとうございます。感謝。

松下 佳弘