ホームで咲かせた大輪の花

 2017年5月7日(日)2回東京6日11R 第22回NHKマイルカップ(GⅠ)は、2番人気のアエロリット(父クロフネ×母アステリックス)が優勝。牝馬による勝利は16年のメジャーエンブレムに続き、2年連続。また1勝馬による勝利はレース創設(96年)以降、初めて。菊沢隆徳(きくざわ たかのり)調教師にとっては開業7年目で嬉しい初めてのGⅠタイトル獲得となりました。

それでは、レースラップです。

勝ち時計 1分32秒3 前・後半4F 46秒146秒2

12.4 – 10.9 – 11.2 – 11.6 – 11.8 – 11.3 – 11.3 – 11.8

 パドックで見たアエロリットはとにかく落ち着きがあってリズム良く周回。同じ牝馬でもミスエルテカラクレナイが時折、うるさい仕草を見せていた分、余計にリラックスした様子に好印象を持ちました。他で目立ったのはアウトライアーズボンセルヴィーソ。ともに集中し、一歩一歩力強く歩けており状態は良さそうに映りました。

 ゲートが開いた瞬間、最も素晴らしいスタートを決めたのはアエロリット。ただ、実戦で燃えやすいタイプですから前に馬を置けないと鞍上の意に反し、行きたがるのでは。そんな不安が一瞬頭をよぎりましたが、さすがは横山典弘(よこやま のりひろ)騎手。リズムを大事にしながら上手に抑え込み、4、5番手で前を見ながら追走。内からモンドキャンノボンセルヴィーソが飛び出して適度にペースが上がったこともアエロリットの折り合い面を考えると良かったと思います。前半3F通過は34秒5。決して速くはない平均ペースで推移しました。

 アエロリット3コーナー手前あたりから手応え良く、前へと接近。横山典弘騎手は4コーナーを回ると内を通らず、コンディションのいい外目へ進路を取ります。GⅠの大舞台でも落ち着いた騎乗ぶり。直線に入ると内で粘るボンセルヴィーソを捉えて抜け出し、外からリエノテソーロに鋭く迫られますが、これを振り切ってゴール。

☆17年 前半3F34秒5→後半3F34秒4 1分32秒3

★10年 前半3F33秒4→後半3F35秒1 1分31秒4  勝ち馬ダノンシャンティ

★11年 前半3F33秒9→後半3F34秒6 1分32秒2  勝ち馬グランプリボス

 1分32秒3という勝ち時計は歴代でも3番目に速く優秀。しかも前傾ラップだった上記の10、11年と違い、今年は前半が比較的落ち着いた流れ。後半を速い上がりでまとめて全体時計を1分32秒台前半まで押し上げた点も値打ちがあり、レースレベルは高いと思います。アエロリットはこれで東京・中山では5戦して連対率10割。過去を振り返りますと、ともに美浦所属の牝馬で優勝した07年ピンクカメオ、16年メジャーエンブレムもNHKマイルCまで関東圏の競馬場では必ず2着以内に好走。西下した桜花賞では崩れながらもホームに戻って巻き返しに成功しており、今後も同様のパターンに当て嵌まる馬がいれば注目したいところ。

 2着のリエノテソーロは中団の外目を追走。折り合いをつけて直線に向くとグイグイ伸びて残り1F地点で勝ち馬に急接近。最後は突き放されてしまいましたが、34秒0という速い上がりをマークし、好時計決着に対応できた点は収穫。2歳時は全日本2歳優駿を制し、世代のダート王に輝きましたが、芝のGⅠでも好走したことにより活躍のフィールドが大きく広がりましたね。ボンセルヴィーソは内枠から果敢に主導権を握って3着に踏ん張りました。上位2頭、そして4着馬も直線で外を通って伸びてきた点を考慮すると、内ラチ沿いを進んで粘り込んだ内容は評価できます。1番人気のカラクレナイは17着。これまで経験のなかった馬群の中でレースを進める形。直線では広い外に持ち出せず力を出し切ることができませんでした。

 ◎を打ったプラチナヴォイスは道中は6、7番手を進みましたが、直線では伸びを欠いてしまいました。パフォーマンスを発揮できておらず、レースレコードが記録された皐月賞から中2週での出走でしたから、疲れもあったのかも知れません。皐月賞組ではトラストの8着が最高着順。今年の3歳世代は、桜花賞 > 皐月賞、そして牝馬 > 牡馬の図式だということでしょうか。

 

text by 京増真臣/構成・藤原

 

 

 

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