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日本ダービー レース回顧

師の執念、騎手の勇気

 2017年5月28日(日)2回東京12日10R 第84回日本ダービー(GⅠ)は、2番人気に支持されたレイデオロ(父キングカメハメハ×母ラドラーダ)が優勝。2歳時は3戦3勝。迎えた皐月賞は追い上げ届かず、初めて敗戦を喫しましたが、そこから上昇を辿り、2014年に生まれたサラブレッド7015頭の頂点に立ちました。藤沢和雄調教師は89年ロンドンボーイで初めて参戦して28年目。シンボリクリスエス、ゼンノロブロイでの2着を乗り越え、19頭を出走させて待望のダービー制覇。騎乗したC.ルメール騎手はヴィクトリアマイル、優駿牝馬に続き、3週続けてのGⅠ勝利となりました。藤沢和雄師×ルメール騎手のコンビは先週の優駿牝馬を勝ったソウルスターリングと同じ。“人”の勢い、運も戴冠を引き寄せたように感じます。

それでは、レースラップです。

勝ち時計 2分26秒9 前・中・後半4F 49秒950秒546秒5

13.0 – 11.2 – 12.9 – 12.8 – 13.3 – 12.5 – 12.1 – 12.6 – 12.7 – 11.5 – 10.9 – 11.4

 

 金曜まで雨が降り続いた東京。芝コースは前日の土曜日は直線で外を通った馬が活躍しましたが、馬場が乾き切った日曜日は内・外イーブンの状態に。8Rの青嵐賞が2分23秒8という好時計決着になったように高速馬場でもありました。レースはマイスタイルがハナを主張し、主導権を握ると思われていたトラストは2番手に控える形。例年、ゴチャつく1コーナーへの進入ですが、今年は目立った混乱もなく至ってスムーズ。そこから主導権を握ったマイスタイル・横山典弘騎手が巧みにペースを落とし、前半5F通過は63秒3。これは過去10年でも最も遅く、上がりの速いレースとなりました。

 勝ったレイデオロは後方を追走。大舞台というプレッシャーもあってか横山典弘騎手の刻むペースの前に後続は金縛りにあったかのように沈黙。ちょうど1F13秒3が記録された5F付近でレイデオロは果敢に2番手までポジションを上げていきます。この判断が勝因なのは間違いありません。ただ、普段のレースではないダービーで流れに抗い活路を開いたルメール騎手のハートの強さには感服するしかありません。直線に入ると馬場の真ん中を鋭く伸びて先頭へ。スワーヴリチャードに迫られるとそこからもうひと伸び。途中で動きながらも、その後はもう1度折り合って、更にゴール前では使える脚(余力)を残していたルメール騎手の手腕は素晴らしく、またその注文に応えたレイデオロのポテンシャルも高く評価せねばなりません。勝ち時計は良馬場で行われた中では2010年と並び、過去10年で最も遅い記録。それでも、見応えは十分でした。

 2着スワーヴリチャードは中団を追走。道中はなるべくロスを抑えて立ち回り、3コーナー付近からジワッと前へ接近。4コーナーでは遠心力もあってアルアインが外へ少し膨れると開いたスペースにスッと馬体を入れます。直線は手前を替えながら鋭く伸びてレイデオロを追い詰めました。四位騎手の騎乗は完璧に近く、やはり左回りですと走りが違いますね。パドック、本馬場入場とイレ込む馬が多い中、落ち着き払った姿や仕草は大物感タップリ。まだ手前の関係で右回りに不安は残りますが、GⅠタイトルを獲れる資質を秘めているのは間違いありません。

 アドミラブルは18番枠から後方を進みます。流れが落ち着きましたから道中、3~4コーナーと外を通らざるを得なかったのは痛かったですね。それでも、最速の上がり3Fをマークし、3着まで押し上げてきたのは非凡な脚力の証明。今回は枠順、展開に泣きましたが、秋は上記2頭を負かす存在に成り得る可能性は十分。

 ◎を打ったアルアインは道中は折り合って3、4番手を追走。ペースを考えるとこれは絶好のポジション。しかし、3~4コーナー付近で少し仕掛けが遅れるような感じに。上がり勝負でしたからこの遅れが痛恨。加速がついたスワーヴリチャードに前に入られ、直線半ばからは盛り返すように伸びましたが、5着まで。結果はどうなったかは分かりませんが、松山騎手には勝利を意識し、強気に、早目にレイデオロを捉えに動いて行って欲しかったですね。

 
text by 京増真臣/構成・藤原

 


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