飾る歴史とこの絆

 

2017年12月24日(日)5回中山8日目11R第62回有馬記念(GⅠ)は、ファン投票1位。そして単勝1番人気に支持されたキタサンブラック(父ブラックタイド×母シュガーハート)が優勝。3、4歳時は叶わなかったグランプリ制覇を3度目の挑戦で達成しました。オーナーは皆さん、ご存知歌手の北島三郎さん【(有)大野商事】。管理するのは清水久詞調教師。北村宏司騎手を背に菊花賞を制し、武豊騎手とのコンビではGⅠ6勝。ジェンティルドンナ以来となるJRAのGⅠ7勝という偉業を引退レースで達成しました。

 

有馬記念当日は朝から曇り空

 

それではレースを振り返りましょう。

【パドック】

 キタサンブラックはマイナス2キロ。いつもの鶴首で540キロと大きな馬ですが、馬体はシャープで流線形。ジャパンカップ当時といい意味で変わりありませんでした。ひと際良く見えたのはシュヴァルグラン。毛ヅヤが良く、堂々とパドックで周回。GⅠタイトルを手にして貫禄が備わってきた印象を受けました。

 

午後になると光が射してきた中山競馬場。パドックを堂々と周回するシュヴァルグラン

 

勝ち時計 2分33秒6(晴れ・良)

前半4.5F・中・後半4F 54秒8 → 51秒5 → 47秒3

6.8 – 11.6 – 11.9 – 12.2 – 12.3 – 13.313.212.8 – 12.2 – 12.1 – 11.7 – 11.2 – 12.3

16年 有馬記念 前半4.5F・中・後半4F 54秒1 → 50秒9 → 47秒6

6.8 – 11.3 – 12.0 – 11.9 – 12.1 – 13.412.812.9 – 11.8 – 11.7 – 12.1 – 11.7 – 12.1

15年 有馬記念 前半4.5F・中・後半4F 56秒1 → 50秒0 → 46秒9

7.0 – 11.7 – 12.2 – 12.5 – 12.7 – 12.8 – 12.6 – 12.6 – 12.0 – 11.9 – 11.5 – 11.3 – 12.2

 

【展開・ペース】

 全体で見ればスローペース。赤で記した部分は1~2コーナーから向正面にかけての部分。16年はこの地点でサトノダイヤモンドがポジションを上げたこともあって緩みませんでした。逆に今年はプレッシャーをかけるために動く馬がおらず、キタサンブラックは息を入れられましたね。その分、余裕を持ってレース後半へ。段々と滑らかに加速し、ラストの2F目は11秒2!直線に入って後続を引き離し、危なげなく押し切りました。

 

 

【レース分析】

 勝ったキタサンブラックは、2番という好枠からスタートを決め、スンナリと主導権を奪いました。ハナに立ってから1コーナーに向かうまでは11秒台のラップを含む、隙のないペースメイク。後続の騎手は「キタサンブラックに競り込んだら自分も潰れる」と思ったはず。そこから1~2コーナー、そして向正面で流れを緩めます。

では何故、この地点で後続は動かなかったのでしょうか?中山内回りのコース図を見ていただければ分かるのですが、1~2コーナーは登り坂。そして向正面に入ると今度は下り坂になります。1コーナー付近から動くとスタミナをロスするだけでなく、加速がついたところで下りに向かうため引っ掛かる可能性も。コースの特徴を熟知し、簡単には動いてこれないだろうとペースを落としたあたりはさすが武豊騎手と言える好判断。振り返ると昨年はサトノダイヤモンドが同地点でポジションを上げて2番手を進んでいたキタサンブラックの外へピタリとつけました。リスクを恐れぬルメール騎手のような決断、レース運びを今年の実力馬にも見せてほしかったですね。

「最高に嬉しい。どうしても勝ちたかった。キタサンブラックの走りをさせることだけを考え、迷いなく先手を取りにいった。直線は頑張ってくれ、と。名馬に巡り逢えて騎手として幸せ。何とか花道を飾れました」とレース後の武豊騎手。今年の天皇賞・春のレース回顧で小林記者が身体能力の高さに目が行きがちですが、大舞台で動じない、そして鞍上に従順といった精神面こそが、この馬のレース支配力を支える最大の武器ではないでしょうか”と述べていますが、私もまさにその通りだと思います。

 

キタサンブラックの4代血統表

 

 クイーンズリングは3番枠から好位の内目を追走。折り合って上手に立ち回れた接戦の②着争いを制すことができました。優勝した昨年のエリザベス女王杯も3番枠で当時もペースはスロー。レース運びのうまさを生かすには中山内回りという舞台もピッタリでした。この馬もキタサンブラックと同じく、今回が引退レース。有馬記念でラストランとなった馬同士のワンツーはグレード制が導入された84年以降では初めての出来事でした。

 ③着はシュヴァルグラン。道中は折り合って中団を追走。3コーナー付近から外へ持ち出して追い上げましたが、ゆったり流れた分、このロスは痛かったですね。そして直線は外からスワーヴリチャードに寄られて挟まれるシーン。たらればになってしまいますが、ジャパンカップの時のように内枠を引き、インで脚をタメて直線もスムーズであれば楽に②着は確保できていたように思います。

ボウマン騎手は「折り合いとリラックスさせることを大切にした。それはうまくいったが、東京に比べるとコーナーワークがぎこちなかった。それに直線はトップギアに入る前に、外からのプレッシャーを受けて減速。もったいないレースだった」とコメント。それでも、昨年の有馬記念は⑥着でしたから自身の成長はしっかりとアピール。これからの古馬戦線の主役候補なのは間違いありません。

 スワーヴリチャードは道中、少し行きたがりながらもシュヴァルグランの後ろを追走。4コーナーでは手応え良く進出。しかし、直線は内へモタれて鋭く加速できず。鞍上が矯正しようと試みるも、更に内に寄れてサクラアンプルール、シュヴァルグラン、トーセンビクトリーの進路を塞ぐ後味の悪い内容。アルゼンチン共和国杯の内容からもポテンシャルの高さは疑う余地がありませんが、右回りでスムーズに走ることが今後の課題なのは言うまでもありません。

 text by 藤原

全レース終了後、「キタサンブラックお別れセレモニー」が行われた

 

 

 ※結果・成績・オッズ等のデータは、必ず主催者発行のものと照合し確認してください。

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