道は二度開く
3回東京2日目11R第68回GⅠ安田記念はモズアスコット(単勝9番人気)が優勝。1989年のバンブーメモリー以来となる連闘での優勝。平成最初と、最後の安田記念を連闘馬が制したことになる。鞍上のC.ルメール騎手、管理する栗東・矢作芳人調教師とも安田記念は初勝利。モズアスコットは父Frankel、母Indiaという血統。生産は米国のサマーウインドファーム社。馬主は㈱キャピタル・システム。
それではレースを振り返りましょう。
【展開・ペース】
レーヌミノルがハナを主張したが、大外枠からスタートしたウインガニオンが並ぶ間もなく、これを交わして先頭。前半3ハロン通過は34秒2。2008~2017年までで良馬場で行われた9回中6回は前半3ハロンが33秒台。平均ペースと考えて良く、終始、外を回ったり、後方に待機した組には厳しい展開になった。
【レース分析】
賞金順では19番目だったモズアスコット。しかし出走予定馬が回避したことで安田記念への道が開けた。ただ、安土城Sを使っての連闘策。しかも、東京への輸送もあるのだから果たして状態は?ジッとパドックに出てくる時を待った。パドックに登場したモズアスコットはイレ込むことなく活気のある周回。馬体重はマイナス6キロだったが、細い感じもなかった。
ゲートが開き、スタートを決めて中団に陣取ったモズアスコット。3コーナーでリアルスティールに前に入られて位置取りが下がる場面はあったものの、終始、手応え良く追走できた。4コーナーでは外を回さず、馬場の3~4分どころを通って直線へ。しかし、脚は溜まっていたが、内目で十分な進路がない。促しつつ迎えたゴールまで残り1ハロン手前付近。前を走るスワーヴリチャードが内にモタれ、これをデムーロ騎手が矯正し、外へ動いた瞬間だった。この際に生じたスペースにすかさずルメール騎手がモズアスコットを誘導。そこからはグングンと伸びて粘るアエロリットを交わしたところがゴール。機を見るに敏な鞍上の判断が光った。結果論になるが、追い出しを我慢した分、最後に甘くなったアエロリット、スワーヴリチャードを差せたようにも映った。
「連闘は心配でしたが、返し馬のあとに状態の良さを感じて安心しました。勝つ自信はありました。直線で前にスワーヴリチャードが見えたので、この馬をマークしました。よく頑張ってくれたし、ハートの強い馬です。今回はメンバーのレベルが高かった中での勝利ですし、日本のベストマイラーだと思いますよ」とルメール騎手。連闘での勝利は勿論だが、昨年6月10日のデビューから僅か1年という驚異的なスピードでGⅠを制したという点もまた快挙と言える。
アエロリットは好位から抜け出して一旦先頭。ゴール前でモズアスコット、スワーヴリチャードに目標にされて迫られたが、これに対応し、最後までしっかりと伸びた。ヴィクトリアマイルに続き、今回もレース後に落鉄していたことが判明。どこまで競走結果に影響を及ぼしたかは定かではないが、負けて強しを印象付けた。何せ2008年以降、牝馬で連対を果たしたのはあのウオッカだけ。この②着は高く評価していい。
スワーヴリチャードに関しては戦前、マイルの速い流れに対応できるかどうかがポイントになると考えていた。それがスタートを決めると5番手を進み、アエロリットの後ろで掛かるぐらいの行きっぷり。心配は杞憂に終わった。直線は外へ、そして内へとモタれたこともあって伸び切れず。それでも、初めてのマイル起用ながら1分31秒4で駆けて③着。底知れぬ能力は存分に示した。
サトノアレスはスタートで出遅れたのに加え、上位3頭とは対照的に3~4コーナーでは外を回る形。それでも、0秒2差まで追い上げてきた点は立派。2016年のGⅠ朝日杯FS覇者が完全復調。流れや立ち回りひとつで二つ目のタイトルに手が届いていい。サングレーザーは8枠15番。前に壁を作れない心配のある枠だが、鞍上の福永騎手は無理に抑えず好位の後ろにポジションを取った。ペース、馬場を考えると後方待機策では厳しく、これは勝利を意識しての判断。先週の日本ダービーを見ているようだった。上手に折り合って運べていた点は収穫。敗れはしたが、戦法の幅を広げる意味でもこの経験は後々、大きな財産となる気がする。2番人気ペルシアンナイトは⑥着。直線でなかなか進路が開かず、かなり追い出しを待たされた。スペースができてからは脚を見せたが。力を出し切れておらず、評価を下げる必要はない。
text by 藤原
※結果・成績・オッズ等のデータは、必ず主催者発行のものと照合し確認してください。