第87回日本ダービー回顧

　5月31日に東京競馬場で行われた第87回ＧⅠ日本ダービー（芝2400ｍ・3歳・定量）はコントレイル（単勝1番人気）が優勝。デビューから土付かずでのＧⅠ皐月賞、日本ダービーの二冠制覇は父であるディープインパクト以来15年ぶり、史上7頭目の快挙。偶然ではあろうが、3枠5番は父のダービー制覇時と同じ枠順だった。新馬戦で手綱を取り、ホープフルSから再びコンビを組んでいる福永祐一騎手、管理する栗東・矢作芳人調教師はともに2度目の日本ダービー制覇となった。コントレイルは北海道新冠町・(株)ノースヒルズの生産馬。馬主は前田晋二さん。

それでは、レースを振り返っていきましょう。

【展開・ペース】　大外枠でしたが、ＧⅠ皐月賞でも果敢に先行したウインカーネリアンがハナを切り、スタートを決めたコルテジアが2番手に付けたのは予想通り。前半1000ｍ通過は61秒7。向正面でマイラプソディが外へ持ち出して進出し、先頭は入れ替わりましたが、ペース自体は極端に速くなることはなく、全体で見てもスローペース。

76年ぶりに無観客となった日本ダービーだが、お昼休みにはパドックで恒例の出場騎手紹介が行われた（撮影：藤田浩貴ＴＭ）

【レース分析】　コントレイルはパドックで落ち着きがあり、脚取りは実にシャープ。抜群の気配でした。スタートを決め、インの3番手に収まった時点で勝負あり。道中は折り合いに専念。遅い流れを見越し、前目に付け、更に途中でマイラプソディが動いてきた際もまったく慌てず、自分の競馬に徹したあたりは福永祐一騎手の冷静さが光りました。直線の入り口でスムーズに外へ。直線半ばまで追い出しを待ち、ゴーサインを出すと最後は3馬身差をつけて独走。スローぺースでしたから驚くような時計は出ませんでしたが、②～⑦着が0秒4差にひしめく、着差の開きづらい流れだったことを思うと圧巻のパフォーマンスでした。

「スタートして少し流れに乗せました。道中のペースが流れず途中で横山典弘騎手(マイラプソディ)が来るだろうと。やはりという感じでしたが、うまく対応することができました。2番手の馬の後ろを取れたことが一番大きかったですね。抜けると、どうしても遊んでしまうので直線では追い出しを待ったのですが、まだ集中し切れなかったです。その点が今後の課題ですが、逆に言えば遊びながらもダービーを勝ってしまう優秀な馬。底の見えない、ポテンシャルの高さを感じました。コントレイルがいい走りを見せて、５戦目をいい形で終えれて良かったです」と福永祐一騎手はコメント。同じように無敗で2冠を達成した父ディープインパクトは飛ぶように府中の直線を外から突き抜けましたが、コントレイルも遊びながらもダービーを勝ってしまうのですから、その能力は底が知れず。日本ダービー号の週刊競馬ブックでも書きましたが、やはりコントレイルはディープインパクトの後継馬となる存在でしょう。

コントレイルの4代血統表

　サリオスは当日の馬体重がマイナス8キロ。この中間、追い切りを強化したことで馬体がグッと引き締まり、叩いた上積みは十分感じられました。スッと控えて後方待機策。コントレイルとの位置関係はＧⅠ皐月賞と真逆になりましたね。Ｃコースに替わり、内目が有利な馬場でしたが、外を回って脚を伸ばし、②着。例年なら勝っていても不思議ではありませんが、相手が悪かったとしか言いようがありません。

　ヴェルトライゼンデは池江泰寿師のコメント通り、ＧⅠ日本ダービーを最大目標とし、前走より一段上の仕上げ。レースはコントレイルをピタリとマーク。4コーナーで外に出して、直線もしっかり脚を使っていますが、コントレイル、サリオスほどの伸びは見られず。上位2頭が別格でした。④着は近年のダービーで好調な1枠1番に入ったサトノインプレッサ。道中は内ラチ沿いで溜めるだけ溜めて直線に賭ける戦法。直線で内へ進路を取り、末脚を爆発させますが、僅かにヴェルトライゼンデには届かず。そして積極的にレースを進めたディープボンドが⑤着。今年は馬券圏内進出はなりませんでしたが、やはり最内枠の馬と先行馬は来年以降のＧⅠ日本ダービーでも注意が必要でしょう。