3月16日(日曜)に中山競馬場で行われた第74回GⅡスプリングS(芝1800m・3歳・馬齢重量・小雨・重馬場)は2番人気に支持されたピコチャンブラックが優勝。管理する美浦・上原佑紀調教師はこれがJRA重賞初勝利。騎乗した石橋脩騎手は当レースは初勝利となった。ピコチャンブラックは北海道新ひだか町チャンピオンズファームの生産馬。馬主は石部美恵子さん。
それでは、レースを振り返っていきましょう。
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【展開・ペース】 スタート直後はクモヒトツナイがハナに立ちそうでしたが、内のダノンセンチュリーが被せられることを嫌ってか、引かなかったので、1コーナーではこちらの方が前に出る形に。3ハロン目は12秒7と少しペースが緩みましたが、向正面に入ると早めに押し上げる馬もいて、その後は淀みのない流れになり、レース上がりは38秒1、ラストの1ハロンは13秒1を要す消耗戦になりました。
【レース分析】 勝ったピコチャンブラック(2番人気)は放牧明けでもすっきりとした体つき。返し馬でも落ち着いていましたし、脚捌きはスムーズで、道悪は苦にしないな、と感じさせるフットワーク。レースでも好スタートから軽く促して先団につけても、行きたがる感じはありませんでした。その後も折り合いはスムーズで、向正面で後続が動いてくると自身も早めに仕掛けて、1000m通過あたりで先頭に並びかける形に。そこからも勢いは鈍らず、直線も鞍上の叱咤に応えて最後まで脚を伸ばし、後続を振り切りました。
「この中間、一生懸命に厩舎の人たちと話し合いながらやってきて、今日、上手に走ってくれたことが一番良かったですね。馬場もあまり(時計が)速くならないようなら、前に利があると思っていましたが、この馬のリズムを崩さないようにとも考えていました。まだ、いろいろなところに課題もありますが、(今回は)行かせた方がいいと判断しました。最後はしんどくなりましたし、こういう馬場に助けられたところもあるので、更に改善できればいいですね。まだ、半信半疑な面もありますが、この先も一生懸命に走ってくれるといいですね」とレース後に石橋脩騎手はコメント。父のキタサンブラック、更には祖父のブラックタイドもこのレースを制していて、スプリングSを三代での制覇となりましたが、道悪を苦にしないパワフルな走りは父譲り。今回はメンタル面の成長も窺えましたが、終始、揉まれずに運んだ鞍上のエスコートも大きな勝因でしょうから、今後は馬群に入る形になった際への対応が、最大のポイントになりそうです。

▲ピコチャンブラックの4代血統表
②着フクノブルーレイク(7番人気)は調教VTRや前日気配を送ってきたTMの原稿からも、状態の良さが感じられた1頭。序盤は馬なりで中団の後ろにつけて、向正面でジワッと追い上げると、本格的に仕掛けたのは残り3ハロンあたりから。直線では一旦、勝ち馬に突き放されかけましたが、そこからもう一度、脚を伸ばしてクビ差まで迫りました。こちらも長く脚を使える長所を生かした鞍上の好騎乗が光りましたし。今後は良馬場での瞬発力勝負への対応が鍵になりそうです。③着のキングスコール(1番人気)は約8カ月の骨折休養明けでも体重は2キロ増と仕上がっていましたが、初めて見る馬でも、少し気配が地味だな、というのが正直なレース前の印象。スタートも出遅れて、早めに追い上げるロスの多いレースになりましたが、直線では内の④着馬に前に出られそうな感じになりながら、③着を死守して皐月賞の出走権を確保したのは能力の高さでしょう。馬場状態も含めて過酷な状況に耐えたあとの体調面が気にはなりますが、順調に本番に進み、しかも当日が良馬場なら、今回の上位馬を逆転する可能性はかなりあると見ています。
④着のマテンロウバローズ(4番人気)は道悪でも好位の内でジッと動かず、この鞍上らしい立ち回り。ただ、戦前から、無傷の2連勝が着差こそ僅かでも速い上がりのレースだったので、理想は良馬場と見立てていたので、最後に詰めを欠いて皐月切符を逃したのは道悪の影響もあったと考えています。それでも、小回りに対応する機動力は見せましたから、馬場さえ良ければコースは不問と言うのが今回の印象です。⑤着が自分が当日版で◎にしていたスワローシチー(8番人気)で、晴雨兼用、上がりを要す展開は歓迎の根拠は間違っていなかったと思いますが、スタートの出負けと外枠から終始、外を回る形になったことが影響した感じ。それでも、スムーズでも③着までだったかな、といったところで、次走が1勝クラスでも馬場や展開、組み合わせ次第といった感じでしょうか。また、3番人気で⑩着だったダノンセンチュリーはキャリア1戦で、抑える競馬を試みるのも厳しい枠順、馬場状態。しかも勝ち馬のプレッシャーも厳しかったですから、粘りを欠いても責められない内容。素質を発揮できていないと見ていいと思われます。
text by 五十嵐 友二
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