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中山牝馬S レース回顧

Overcome oneself

 

 2018年3月10日(土)2回中山5日目11R第36回中山牝馬S(GⅢ)を制したのは単勝6番人気のカワキタエンカ(父ディープインパクト×母カワキタラブポップ)。管理する栗東・浜田多実雄調教師は開業6年目での嬉しいJRA重賞初勝利となった。池添謙一騎手は初めてコンビを組んだ昨春の君子蘭特別を勝っており、これでカワキタエンカに騎乗時は2戦2勝。生産は新ひだかの木田牧場。馬主の川島吉男オーナーは母カワキタラブポップも所有。愛馬の産駒で重賞制覇を成し遂げた。

 

それではレースを振り返ってみましょう。

 

勝ち時計 1.49.0(晴・稍重)

前半3F → 中盤3F → 後半3F 36.9 → 36.7 35.4

12.5 – 12.1 – 12.3 – 12.3 – 12.1 – 12.3 – 12.0 – 11.5 – 11.9

【展開・ペース】

 大外枠から好スタートを決めたカワキタエンカ。そのままグングン加速し、前へ出ようとしたエンジェルフェイスを抑えて1コーナー入り口でハナを奪取。前半3ハロン通過は36.9→5ハロン通過は61.3。昨年のローズS秋華賞では5ハロン通過58、59秒台と速いラップを刻んでレースを引っ張り、粘り込んでいたカワキタエンカにとっては道中、息を入れながらの楽な逃げ。そんなゆったりしたペースでありながら、向正面で2番手が4~5馬身離れた時点で勝負は決していた印象。

 

フロンテアクイーンに迫られながらも逃げ切ったカワキタエンカ

 

【レース分析】

 秋華賞後は休養し、2月の京都・洛陽Sで今年緒戦を迎えたカワキタエンカだが、結果は逃げ粘れず⑩着。レース後、騎乗した横山典弘騎手は「返し馬から普通に歩けず、レースでも真っ直ぐ走れなかった。発走前に終わっていた感じ。気持ちの問題。とにかく今日はご機嫌斜めだったよ」とコメント。レース前から気持ちが高ぶり、主導権を握れたものの、終始行きたがったこともあって失速。決して、馬場(当時の芝は稍重発表)に泣いたり、力不足であったわけではなかった。 

今回は久しぶりに関西圏以外でのレース。輸送を克服し、果たして平常心で臨めるのかどうか。浮沈の鍵を握るのはこの一点。パドックに現れたカワキタエンカは多少、チャカつく仕草を見せたが、カーッとテンションが上がることなく周回。陣営が中間の追い切りの内容を馬なりのソフト調整に切り替えた効果も感じられた。また他馬より先に本馬場に入るいわゆる”先出し”を行ったことによりスタンドの歓声でイレ込むようなこともなく、ゲートインを迎えることに成功。前走の敗戦を糧に、改善するため諸々を工夫した陣営の勝利とも見て取れた。

 

パドックでのカワキタエンカ(Photo by yu~kun)

 

「前走を使ってガス抜きができていたし、陣営もイレ込みを考慮してソフトな仕上げをしてくれましたが、それらがレースに生きたと思います。それでも、力むところがあるので、まずは自分との戦い。今日は53キロのハンデも味方しましたし、もう少しメンタルの面で強くなってほしいですね。まだこれからの馬。ひとつずつ段階を踏んで上がっていってくれれば」と池添謙一騎手。

昨年の桜花賞、秋華賞でも果敢に逃げて上々の粘りを発揮するなど能力は高い馬。常に平常心でレースに臨めるようになることが更に上のステージで勝ち負けするためには必要でしょう。

 

カワキタエンカの4代血統表

 

 ②着はフロンテアクイーン。スタート後に少し仕掛けてポジションを上げ、インの3番手を追走。3コーナー付近から逃げるカワキタエンカとの差を詰めて直線へ。エンジェルフェイスの内から伸びたものの、並びかけようとしたところから勝ち馬に二枚腰を使われて半馬身届かず。これが重賞競走では4つめの銀メダルになったものの、コースの回りやペースに左右されない安定感は魅力。昨年の中山牝馬S当時に見せていたうるさい面が解消した点にも成長が窺える。

 愛知杯で②着だったレイホーロマンスが③着と続けて好走。馬体重は前走時からマイナス12キロ。かなり小柄な分、心配になる数字だったが、後方から脚を伸ばしてゴール前で浮上。中山内回りコースが舞台であることを意識し、残り400m標識手前から仕掛けて一気にポジションを上げたあたりは岩崎翼騎手の好判断。差し・追い込みタイプで掲示板に載ったのはレイホーロマンスだけ。ハービンジャー産駒らしくコーナー4回の1周競馬の方が向く印象。今後は斤量が増えた際や高速決着に対応できるかがポイントに。

 ④着は内をロスなく立ち回った昨年の覇者トーセンビクトリー。昨年暮れの有馬記念は不利を被り、ダメージを心配したが、AJCC⑤着に続いて今回も健闘。昨年よりハンデは3キロ重かったが、力を示した。

 トーセンビクトリーと同じ56キロのハンデを課せられた1番人気マキシマムドパリは⑫着。内をロスなく立ち回れたものの、遅い流れを考えると少し位置取りが後ろ過ぎたか。このあとは故郷の社台ファームに戻って繁殖入りするとのこと。引退レースは好結果を残せなかったが、アッと驚く直線一気を決めた愛知杯、好位から抜け出したマーメイドSと重賞を2勝。ファンも多かった馬。産駒がターフに姿を現す日を心待ちにしたい。本当にお疲れ様でした。

text by 藤原

 

 

  

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