8月11日に札幌競馬場で行われた第24回GⅢエルムS(ダ1700m・3歳以上・別定)は単勝2番人気のモズアトラクションが長く脚を使って差し切り勝ちを収めた。着実に力をつけて5歳にして本格化成った印象。平安Sからコンビを組んでいる藤岡康太騎手のペース判断、進路取りのうまさも光った。管理するのは栗東の松下武士調教師。モズアトラクションは北海道新ひだか町・築紫洋さんの生産馬。馬主は㈱キャピタル・システム。

 

それではレースを振り返っていきましょう。

 

 

 9日金曜の午前10時に枠順が発表された。最内枠は初ダートとなるが、テンは滅法速いマルターズアポジー。隣の2番にはこれも先行力が光るテーオーエナジーが入り、3番は前2年の当レースでハナを切っているドリームキラリ。ここまで先行タイプが内に固まるものなのか。勿論、リアンヴェリテもハナを切りたい。大外枠に入った分だけ押して押して先制を目指すであろう。ペースが速いのは当たり前だが、枠順を見ながら何が逃げて、どれが2番手を進んで、と考え始めたが、いつまで経っても答えが出ない。あまりにも難解過ぎて、私のツイッターアカウントで下記のようにツイートしたところ、同じように考える方からたくさんの意見が寄せられた。どれも興味深く読ませていただきました。この場を借りて御礼申し上げます。

 

 

【展開・ペース】 ゲートが開くとハナ候補の1頭、マルターズアポジーが躓き、ダッシュがつかない。すかさず坂井瑠星騎手が出ムチを入れてドリームキラリを鼓舞。先手を奪いにかかるが、外から勢いをつけてリアンヴェリテが馬体を寄せてくる。1コーナーを回り、ドリームキラリが一歩前に出たものの、外のリアンヴェリテが馬体を併せてピッタリとマーク。前半500m通過は28秒5。これは1分40秒9というレコードが飛び出した2017年よりコンマ7秒も速い。しかも2017年は非常に走りやすい重馬場。今年は稍重とはいえ、良馬場に近い含水率。とても先行勢が粘り切れるようなペースではなかった。

 

【レース分析】 2014~2018年まで過去5回のエルムSを振り返ると、連対した10頭はいずれも4コーナーを1~3番手で通過。とにかく前、前で運んだ馬が有利なレース傾向。ただし、今年は徹底先行型が揃い、序盤からかなり競り合ったため超の付くハイペースに。この激流を味方につけたのがモズアトラクションだった。

特筆すべきは2点。ひとつはコース取り。差し・追い込み馬は勝負どころで前が塞がってブレーキをかけるのはなるべく避けたい。いつでも外へ出せる位置を取りたいものだが、藤岡康太騎手はモズアトラクションを4番枠から終始、内目で我慢させる。確かに馬群が縦長になった分、可能となった進路取りだが、ロスを抑えたのが終いの爆発的な伸びにつながったと推察できる。ふたつめは仕掛けのタイミング。モズアトラクションは3コーナーを8番手、4コーナーを5番手で通過。前走のマリーンSと同様に勝ちを意識して早目に動いている。この2点が勝利を引き寄せた。

 

モズアトラクションの4代血統表

 

 「前半はこの馬のリズムで進めていきました。流れも思っていた通りでした。終いの脚はあるので、あとは進路の取り方だけだと思っていました。走破時計も優秀でしたし、最後は本当にいい脚を使ってくれました。勝てて良かったです」とはレース後に藤岡康太騎手のコメント。平安Sで初めてコンビを組んでからインを突いたり、早目に動いたり、試行錯誤を重ねながら様々なパターンを試してきた。今回は馬群が縦に長くなったのをうまく生かし、内目をスルスルと進出。鞍上がしっかりと癖や使える脚を把握していたからこそ出来た芸当だろう。自ら動いて勝利したことで展開待ちの追い込み型からは完全に脱却。急速に力をつけており、GⅠレースでも狙える逸材であると感じる。

 

 

 ②着は昨年の覇者ハイランドピーク。過去の好走馬、いわゆるリピーターが馬券に絡みやすいレースではあるが、不振を脱して一変した。8枠からのスタートだったが、向正面で内に潜り込み、3~4コーナーは内ラチ沿いを追い上げた。状態の上昇、コース適性の高さなど好走の要因はいろいろ考えられるが、モズアトラクションと同様にロスなく運べたのも好走を大きくアシストした格好。久しぶりに騎乗した横山和生騎手のキラリと光る好プレー。

 ③着はサトノティターン藤岡佑介騎手は「1コーナーで被せられて1列下げてしまいました。そこがスムーズでしたら、ワンテンポ、ツーテンポ早く動いていけたんですが」とレース後にコメント。確かに1コーナーで外からメイショウスミトモに前に入られている。その後も上位2頭とは違い、内に潜り込むことも叶わなかった。そんな状況でも外目を追い上げて③着まで浮上。多少、ムラな面はあるが、やはり重賞ウィナー。脚力は非凡だ。

 他で気になったのはタイムフライヤー。初ダートだったが、先頭集団の中でレースを進める。前半1000m通過58秒6というペースを正攻法で追いかけながら直線入り口ではリアンヴェリテに並びかけて一旦は先頭争い。最後は後続の餌食となったが、タイムパラドックスの近親らしく高いダート適性を示した。今後はダート戦線での活躍を見込んでいい。1番人気のグリムは先行集団を形成する4頭を前に見ながら6番手で虎視眈々。絶好の位置取りに映ったが、勝負どころでは反応できずに後退。距離が短縮され、極端に速い流れに戸惑ったのか。物足りなさは残るが、力を出し切っての敗戦ではなく、この1戦だけで見限るのは早計だろう。

 

 

                                 text by 藤原 有貴

 

※結果・成績・オッズ等のデータは、必ず主催者発行のものと照合し確認してください。

 
 

 
 
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