去る2020年11月3日(火)、門別競馬場にて第1回目となる「JBC2歳優駿」が開催されました。ホッカイドウ競馬では新型コロナウイルスの感染拡大を受け、4月のシーズン開幕当初から無観客での開催を余儀なくされました。その後、各地では順次入場が再開されていましたが、門別競馬場では無観客競馬を継続。シーズンラストの開催が近づき、新型コロナウイルスの収束の見通しが立たない状況だけに、今シーズンは観客の入場が1度もないまま終了する可能性も考えられました。

 しかしながら、今年記念すべき第1回目となり門別競馬場では初めての開催となるJBC2歳優駿を前に、昨年からJBCに向けてスタンドの改修などを行ってきた主催者側は何としてもJBC、ラスト開催をファンの目の前で、行いたいという思いはとても強かったはずです。そして開催を間近に控えた10月16日、制限つきではありますが、観客を入れてラストウィークを開催するという発表がなされました。開催へ向けた感染拡大防止対策など、各種準備を行ってきた関係者の方々の尽力には心から感謝したいですね。

 

▲JBC2歳優駿当日の門別競馬場

 

 ラストウィークの3日間、入場することができた一般ファンは各日事前応募による50組100名まで(応募多数の場合は抽選)。広報の方に伺ったところ、3日間合計でおよそ1000件の応募があったのだそうです。私は今回、一地方競馬ファンとしての立場ではなく、取材者としてJBC当日、現地門別競馬場に赴く機会を得られました。私はほぼ毎年のように門別競馬場を訪れていますが、今年はまず入場門からして普段とは装いが異なっていました。「ホッカイドウ競馬史上最大の!シーズンファイナル」と銘打たれ、さながら何かの式典会場を訪れたような雰囲気で、「無観客の解除」、「初の門別JBC開催」、そして「シーズンラスト開催」ということでいろいろな意味で特別な一日であるということを強く感じさせられました。

 

▲門別競馬場の入場門 人数制限はあるものの門別競馬場にファンの活気が戻ってきた

 

 場内ではパドックは観戦エリアが制限されていましたが、入れるエリアが厩舎側にも広がり、またビジョンが新しくなっていました。また、スタンドの改築、簡易スタンドの新設など、JBC開催へ向けて昨年シーズン終了後から整備されてきた施設がお目見え。発売エリアでは仕切りが設置され、各イス、ベンチなどもソーシャルディスタンス確保の目的から座る位置が制限されていました。

 

▲しっかりとコロナ対策を施された発売所

▲パドックでも『密』にならぬように制限が設けられていた

 

 喫煙所も昨年までの場所から移設、集約され、人数制限がなされ、コース側のエリアでは新たに表彰台が設置されるなど、昨年訪れた時からはかなりの変更点が見受けられました。

 

▲ポラリススタンドの外壁もJBC仕様に!

▲ポラリススタンド内の様子 ソーシャルディスタンス確保のため使用できる椅子が制限されていた

 

 今年は大井競馬場とのJBCダブル開催。通常よりも早く1Rがスタートしました。シーズンラストの開催にして今年初めてファンが入場しての開催がスタート。私が前回、門別競馬場を訪れた時は当然、コロナ禍以前でしたが、現地で活動を続けてきた競馬ブック・ホッカイドウ競馬担当スタッフにとってはファンが戻ってきたなかでのレースは感慨深いものだったことでしょう。タイムスケジュールとしてJBCレディスクラシック、JBCスプリントの時間帯は門別競馬場は小休止、その後、JBCクラシックを前にJBC2歳優駿の発走となりました。

 

▲JBC2歳優駿のパドック 初代勝ち馬の座を14頭の若駒が争った

 

 14頭で争われた第1回JBC2歳優駿は単勝1桁台が5頭、うち4頭がJRA所属馬。JRA唯一の2勝馬タイセイアゲインを筆頭にJRA勢が上位人気を形成。対する地元・ホッカイドウ競馬勢も重賞戦線で上位争いした面々が顔を揃え、単勝オッズとは裏腹に個人的には大混戦だと睨んでいました。発走10分ほど前に突然暴風雨が降り出し、どうなることかと心配しましたが、発走を迎える頃には嘘のように雨がやみました。

 レースに関しては見ていた方もおられると思うので割愛しますが、オッズとは対照的に上位5頭のうち③着レイニーデイを除き、地元・ホッカイドウ競馬勢が上位を占め、その他のJRA勢は下位に沈むこととなりました。

 

 

▲地元のラッキードリームがJRA勢を蹴散らし、初代王者に輝く

 

 ホッカイドウ競馬で行なわれる2歳のダートグレード競走は2つ。牝馬限定のエーデルワイス賞ほどではないにしても、JBC2歳優駿の前身である北海道2歳優駿も地元馬がJRA勢と五分、あるいは互角以上に渡り合うことがしばしば見られました。長距離輸送の負担がないのは勿論ですが、JRAとは違い、ホッカイドウ競馬では実戦形式の能力検査を経て2歳の4月にはもうレースがスタートします。またJRAでは2歳時、勝ち上がってしまうと出走可能なダートのレース数が少ないのですが、門別競馬場では目まぐるしく変化する馬場に翻弄されながらも多くの実戦経験を積むことができ、この時期のJRA勢に対して地の利だけでなく、メンタル、フィジカル、あらゆる面で優位に立てることは確かです。

 

▲JBC2歳優駿を制したラッキードリーム

 

大井で行われたJBCスプリントではサブノジュニアがJRA勢を抑えたように、地方馬がJRA勢と勝ち負けを演じることでJBCはより一層熱く盛り上がります。JBC2歳優駿が今後発展していく過程において、第1回を地元馬ラッキードリームが制した、しかもトランセンデンスとのワンツーフィニッシュを果たしたことは馬産地競馬たるこのホッカイドウ競馬で非常に意義深いものとなったとも思います。

 

▲JBC2歳優駿の口取りの様子

 

 当日はJBC2歳優駿の発売金額がホッカイドウ競馬における1競走のレコードを更新、更にはJBC当日の発売金額が1日あたりのレコードも更新という、大盛況のうちに幕を閉じました。ラスト開催を終え、今シーズンのホッカイドウ競馬の発売金額も計画、前年度実績を大きく上回り、史上初となる500億円超え、520億円に達しました。

 

▲JBC2歳優駿の表彰式の様子

▲騎乗した石川倭(やまと)騎手 デビュー8年目。昨年に続き、今年もホッカイドウ競馬リーディングに輝いた

 

 今回、入場者は100名という限定された人数でしたが、本来であればこの何倍、何十倍ものファンが訪れていたことは容易に想像できます。場内では地元の子供たちと思われる一団がレースを見て声援を送っていたり、各地からこの日のために来場した関係者の談笑、今シーズン初めてとなる門別競馬場で競馬を楽しむファンの姿が見られました。発売金額が大きく増えたとはいえ、当然、ファンが競馬場に足を運び、応援する、競馬を様々な形で楽しむということは間違いなく必要であり、ファンなしの競馬場はどこかピースの欠けたパズルの様にも思えます。既に2021年も門別競馬場でのJBC2歳優駿の開催は発表されています(残るJBC3競走は金沢競馬場で施行)。来年は数多くのファンの前でJBC2歳優駿が開催されることを切に願うとともに、中央地方問わず一日も早く元の賑わいが戻ってくることを祈るばかり。私はどちらかは決めかねていますが、来年もJBCの舞台を訪れるつもりです。

 

▲大盛況のうちに幕を閉じた門別競馬場でのJBC開催 来年は多くのファンとともにこの瞬間に立ち会いたい

 

 

 

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競馬ブック M.M

 競馬があるところにはどこへでも足を運び、JRA、地方競馬場を踏破。2016年には香港にも遠征。JRAは勿論だが、地方競馬が大好物。ただ、馬券はド下手という致命的な弱点を持つ。どうしても競馬に関わる仕事がしたいと一念発起して、2017年競馬ブックに転職。業務で校正など、日々「日本語」と格闘中。